拳銃があれば暴漢に襲われても対処可能では?と思われる方もいるかもしれないが、至近距離では武器として有効と言えない。むしろ「奪われないように」と守る意識が働き、邪魔な存在にさえなる。やはり警棒か、日ごろ研鑽(けんさん)を積んでいる柔道や逮捕術で対処するしかない。

 しかし、訪問者がいきなり刃物で襲撃する事態など想定していないから、至近距離で不意を突かれたら対処はまず不可能だ。百戦錬磨のイメージだが、警察官も生身の人間なのだ。悔やまれるのは、清野巡査長が耐刃防護服を着用していなかったことだ。

 仙台市の事件を受けて警察庁は19日、通達で全国の警察本部に耐刃防護服常時着用のほか、警察官の複数配置など安全確保を強化するよう指示。カウンターの配置や機材の点検、侵入防止の対策も求めた。また富山市の事件後に配備を急ぐとしていた新型ホルスター(拳銃入れ)も、早急な手配を要請した。

 栗生俊一長官は20日の記者会見で「事件を大変重く受け止めている。各警察本部の取り組みを通達で加速させ、交番のセキュリティー徹底を図りたい」と述べた。

 筆者の近所にある交番所長(警部)に話を聞いた。「通達は聞いたけど、交番は住民との相談窓口。露骨な警戒を見せるわけにはいかない。正直、どうすりゃいいのか困っている」。薄くなった頭をかきながら、眉間にしわを寄せた。

 通達の徹底と、交番の活動が両立するのは難しいのかもしれない。筆者はかつて、殉職警官の遺族に話を聞いたことがあった。「職業は警察官でしたが、帰宅すれば普通の夫であり、お父さんでした」と悔しそうだった。清野巡査長も双子の父親で、子煩悩として知られていた。

 筆者は全国紙社会部記者だった2006年、仙台東署管内で発生した新生児誘拐事件で、応援として派遣された。宮城県警本部、仙台東署の警察官の方々にお世話になった。記者クラブに所属しない「ヨソモノ」なのに、親切・丁寧にしていただいた。

 宮城県警、ならび仙台東署、ご遺族にお悔やみを申し上げ、清野警部補(2階級特進)のご冥福を心からお祈りいたします。