和歌山県警機動隊の20代男性巡査が14日、拳銃を一時紛失していたことが発覚した。約1時間20分後に住民が「落とし物」として届けて事なきを得たが、もし悪用されていたらどうなっていたか…。拳銃を巡っては6月、富山市の交番で警察官が刺殺されて拳銃を奪われた上、民間人が射殺された事件があったばかり。4月には滋賀県彦根市の交番で巡査が上司を射殺する事件が発生。各地で拳銃の紛失も相次いでおり、警察OBからは「富山の事件は対応が困難だったが、警察官の拳銃に対する心構えが軽く緊張感も欠如している」と危惧する声が上がっている。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
紛失は実戦用の自動式
和歌山県警の発表によると、巡査は自民党総裁選の遊説で訪問していた安倍晋三首相らの車列を私服で警護中、和歌山市中心部の路上で警察車両助手席の窓から身を乗り出し、マイクで一般車両に停止を呼び掛けていた。拳銃を紛失したのは14日午後7時50分頃。左脇ホルスターの留め金が車両の窓枠に引っ掛かって外れ、路上に落下したという。
このため巡査の乗った車両は車列を離れ、同乗していた同僚らと付近を捜索。その後、県警本部からも約50人が駆け付けて捜したが見つからなかった。結局、散歩中の住民が落とした直後の午後8時頃に拾って自宅に持ち帰り、午後9時過ぎに周辺で捜索していた警察官に手渡していたという顛末(てんまつ)だった。
巡査は警護の訓練に参加したことはあったが、要人警護に就いたのは初めてだった。県警は拳銃携行の方法に不適切な点はなかったとしているが、拳銃とホルスターをつなぐ吊り紐は装着されていなかった。事実関係を公表したのは翌15日午前2時半。約6時間半にわたり伏せていたわけだが、県警は「住民に不安を与えたくなかった」と説明している。
付近住民の男性によると、警察官が「落とし物を捜している。何か拾っていないか」と各家庭を訪問。「何か」が何とは説明していなかったが、男性は「まさか、拳銃だったなんて。いや、びっくりしたよ」と驚いていた。