残業月間60時間超が常態化。さらに退勤後にもかかわらず携帯電話が頻繁に鳴り、電話応対に追われる。こうした応対は当然サービス残業扱い…。長時間労働に嫌気が差していた係長は、不正行為に手を染めてしまうが、部下からの内部告発で不正行為が発覚。部長に呼び出された係長は、退職勧奨に応じるのか、それとも部署異動や地位降格の覚悟で会社に踏みとどまるのか――?退職勧奨が実は言動次第で退職強要になりかねない事例を紹介したい。(労働問題ジャーナリスト 鈴木貴文)
化粧品メーカー。従業員数は約1000人。事業の主軸は化粧水を製造・販売している。繁忙期を迎え、長時間労働が常態化するようになっていた。
登場人物
高橋係長:製造工場で働く30代中堅社員。工場の出荷ラインで現場監督を任されている。中途入社10年目。押しに弱く、周りに流される傾向が強い。
佐藤(女性)・鈴木(男性)・星野(男性):製造工場で働く20代若手社員。高橋係長の指揮の下、正社員として働いている。ゆとり世代らしく、仕事よりもプライベート重視。
市川部長:工場全体の指揮・監督を任されている50代後半の責任者。性格はTHE企業戦士。感情的な発言をすることが時折あるが、中間管理職として大局を見誤ることは少ない。
部下の不満と手抜き発言に押され
不正行為に手を染めた係長
繁忙期を迎え、工場は昼夜問わずフル稼働。足りない労働力は残業時間で補っていた。残業代を当てにしない社員にとって、これほど面白くない状況はない。
佐藤「この仕事量、どうやっても今日中に終わりませんよ」
鈴木「大口の出荷を優先させましょう。それしか方法はありません」
係長「でも、先にオーダーがあった取引先を優先しないと…」