大学を追われた植村氏には、朝日新聞記者時代から務めていた北海道の北星学園大学非常勤講師として迎えられた職だけが残された。

 竹中記者は「『慰安婦火付け役』朝日新聞記者はお嬢様大学クビで北の大地へ」と追い打ちをかけ、この時も大学に質問状を送り付けた。「大学教員としての適性には問題はないとお考えでしょうか」。

 記事は大学への攻撃に火をつけた。

「貴殿らは我々の度重なる警告にも関わらず、国賊である植村隆の雇用継続を決定した。この決定は、国賊である植村隆による悪辣な捏造行為を肯定するものだ」との書き出しで、学生や教職員に危害が及ぶことを警告する脅迫文書が送られるようになる。

 脅しは家族にまで広がった。長女の写真が実名といっしょにネットにさらされ、「必ず殺す。何年かかっても殺す。何処へ逃げても殺す。絶対にコロス」などの脅迫文が繰り返し届けられた。

 それから4年がたち、憎悪のごとく吹き荒れた右派論壇の足元で、その主張の根拠が訂正された。裁判の過程で「捏造」は言いがかりであることが明らかにされつつある。

 最近では、力を増す差別的言論に便乗した「新潮45」が杉田水脈議員(自民党)を担いでLGBTに対する不条理な言説で世のひんしゅくを浴びた。

 上滑り気味の右翼論壇の「やり過ぎ」に世論のバランス感覚が働いているようにも見える。時の勢いに乗った右翼の「歴史戦」もまた、押し戻されつつある。

(デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員 山田厚史)