GoogleはTotal cash and short-term investments(現金及び短期投資)がナンバーワンだとしましたが、これは短期保有目的で所有している有価証券のみを現預金に加えて計算したためです。Appleは長期で保有するLong-term marketable securities(長期有価証券)が多いのですが、これも実質CashとみなせばAppleの総Cashは81,570百万ドルです。Googleはそうした長期投資をほとんど所有していないので、Googleの保有CashはじつはAppleの半分ということになります。

 決算書、特にBSには特徴のない企業ということですが、それでもGoogleの売上高379億ドル(約3兆円)、営業利益122億ドル(約1兆円)は、驚異的な値です。日本企業で営業利益1兆円を稼ぐ企業は現状ありません。しかも、いまだ年率30%の勢いで成長しているのです。

 では、Googleはこの驚異的な営業利益をどこから稼いでいるのでしょうか。われわれにとって身近な企業でありながら、いざどこで稼いでいるのかと考えると、案外わかりにくい企業でもあります。Googleと聞いて、皆さんがイメージできるものを列挙してみてください。たとえば、こんな感じです。

・検索エンジンと、それに連動する広告の配信が主な収益源?
・動画サービスのYouTubeを何年か前に買収しているはず?
・Gmailの運営だって、もちろんGoogle
・Android OSを各携帯端末メーカーに提供しているのもGoogle
・Google Chromeというウェブブラウザの供給もしているはず
・最近立ち上げられたGoogle版SNSのGoogle+(グーグルプラス)は明らかにfacebookへの対抗策
・最近のモトローラ・モビリティー買収の真の意図は?
・クラウド・コンピューティングのリーディング企業と聞くが?
・最近はプライバシー保護の関連で訴訟が起きていると聞く

 上のようなキーワードがスラスラと出てくる方は、IT業界にいらっしゃるか、そうしたツールを自由に使いこなすネットリテラシーの高い方なのでしょう。では、上記のなかで、確実に売上、利益に結び付いているのはどれでしょうか。Googleの2011年度の売上高379億ドルについて、年次報告書(Form 10-K)では、とても簡素ですが次のような分解が示されています。

  Googleの売上のじつに96%は広告収入です(もちろんYouTube上に表示される広告収入も含まれますし、Googleの提供する各種ツールの根底にはクラウド技術が生きています)。全社売上の4%を占めるOther revenues(その他売上)には、広告主やエージェントに対する各種マネジメント・サービス料やシステム使用料が含まれています。Android OSやウェブブラウザは無償で提供しているため、売上というかたちでは表れません。

 一方の費用はどうでしょうか。先のC社で見たように、Googleの売上高営業利益率はざっと3割です。7割の費用は、おおむね次のように分解できます。

ネット広告ナンバーワン企業なのに、なぜ利益率は劣るのか

 売上高営業利益率32%は十分な高収益率ですが、同じ広告モデルであるFacebookの47%、ヤフージャパンの55%、グリーの49%、DeNAの50%(いずれも2012年5月8日前に発表された直近年度決算数値をもとに計算)に比べると、かなり見劣りします。ネット広告ナンバーワン企業でありながら、なぜ利益率は劣るのでしょうか。