ナンバーワン項目に注目してみる

 さて、残り3社(IBM、Apple、Google)はどうでしょうか。残ったA、C、D社それぞれが5社のなかでナンバーワンとなっている項目をざっと書き出してみましょう。

A社: Revenues, Operating income, Net income, Accounts payable, Total equity, CF from operating, CF from investing(マイナス値が最大)
C社: Total cash and short-term investments
D社: Accounts receivable, Net property plant and equipment, Goodwill, Retained earnings, Total assets, CF from financing(マイナス値が最大)

 これらナンバーワン項目から、ずばり残り3社を当てることができれば、あなたの会計力&IT企業理解力はまずまずです。各社が持つナンバーワン項目を中心に、もう少し噛み砕いてみましょう。

A社: 売上、利益、CF(キャッシュフロー)創出力は最大。必然的に潤沢な内部留保とそれに基づく株主資本を保有しています。買掛金は多いのに棚卸資産が極端に少ないことから、サプライヤーへの支払いがかなり渋いことや、在庫の回転が速い企業(自社が保有しないポリシー)であることがうかがわれます。

C社: 実質Cash(現金及び短期投資)以外には、ナンバーワンがないことが特徴といえば特徴。実質Cashが売上より多いのは、C社だけ。これは個人に例えれば、年収より貯金が多いということですが、企業では通常見ない姿です。Inventory(棚卸資産)が存在しないことに気づけば、企業名はおのずと明らかになるでしょう。

D社: 売掛金、有形固定資産、のれんがナンバーワンの企業。棚卸資産もAmazonの次に多いので、全方位的に投資を行っている印象。気になるのは、利益剰余金は多いのに、株主資本はその5分の1であることです。ロジカルに考えれば、自社株買いを積極的に行い、これを金庫株として所有していることがうかがわれます。それを裏付けるように財務CFが大きなマイナスにもなっている(D社は2010年、2011年度と2年連続して、150億ドルの自社株買いを実施している)。株主重視の姿勢の強い企業でしょう。

 このあたりで、もうおわかりでしょう。正解は次のようになります。

Googleはどこで稼いでいるのか

 Googleの検索サイトで「Google」と検索しても、最上位に表示されるのはGoogle.co.jpの検索サイトです。そこからGoogle.comに移行し、下のほうに小さく表れる「About Google」をクリックし、そこで運よく「Investor relations」を見つけることができれば、ようやくGoogleのIRサイトにたどり着くことができます。でも、これはとても面倒な作業です。最初からシンプルに「Google investor relations」と検索すれば、ワンクリックでIRサイトにジャンプできます。

 いみじくもGoogleは、5社のなかでもっともナンバーワン項目が少ない企業、つまり決算書に際立った特徴のない企業となりました。資産の75%が実質Cashで、13%の有形固定資産と10%ののれんを合わせれば、説明はすべて完了するという、至ってシンプルなBS(貸借対照表)です。