「ネットだから利益率が良い」は誤った考え
受講生から時おり耳にする意見に「ネットビジネスは投資しないから利益率が良い」というものがありますが、これは明らかに誤った考えです。少なくとも「優良な」ネットビジネスは~と、まくら言葉をつける必要があります。世の多くのネットビジネスはうまく立ち行かず、利益を出すのにすら苦労しているのが現実だからです。
では、優良であれば、ネットビジネスはすべて利益率が良いのでしょうか。そんなことはありません。ネットの上でも小売業、つまりメーカーが作ったものを仕入れて売る、という薄利多売型の商売が中心であれば、どんなに優良でもそれほど高い利益率は望めないはずです。5社のなかでそうした商売を行っているのは、Amazon.comです。
そこで、利益率(margin)がもっとも低い企業から探してみれば、売上高営業利益率1.8%と、他の4社に比べて極端に低いB社がAmazonだろうと想像がつきます。
B社はInventory(棚卸資産)がそこそこあり、Net property plant and equipment(有形固定資産)が比較的少なく、かつTotal assets(総資産)が売上高(Revenues)の半分程度と少ないことも、Amazonである決定要因です。他の4社はすべて、売上高より総資産のほうが大きくなっています。
企業ステージの違いは、規模の違いに現れる
次に、規模の違いにも着目してみましょう。5社のなかで極端に数値が小さい(売上高37億ドル、営業利益17億ドル、総資産66億ドル)のがE社です。ただし、売上成長率88%、営業利益率47.3%は5社中トップです。つまり、まだIT業界では駆け出しの段階だけど、圧倒的な成長力と収益性を実現していることになります。これも問題ないでしょう。E社はFacebookです。
拙著『戦略思考で読み解く経営分析入門』では、業態や経営戦略により決算数値にどのような違いが表れるかを、日本企業をケースとして紹介しています。よろしければ参考になさってみてください。