米雇用市場を冷え込ませるものなどあるだろうか。そう、米連邦準備制度理事会(FRB)だ。米企業の採用難は先月、一段と悪化した。9月の雇用の伸びは鈍化したものの、失業率は3.7%と、前月の3.9%から低下した。雇用減速はハリケーン「フローレンス」の影響だった公算が大きい。ただ、失業率は1960年代後半以来の低水準となっている。現在の労働市場は当時から様変わりしたとはいえ、60年代の状況を振り返ってみる価値はある。1960年代と言えば、失業率が低下し、初めの頃にはインフレも低水準だった。だが、60年代半ばになって賃金と物価が上向き始めた。インフレ率は65年終盤の1.9%から69年終わりには5.9%へ上昇。FRBは早期に強硬な対応策を講じることはなかった。69年にその必要性を認識し、翌日物金利を6%から9%へ引き上げた。これによって米経済はリセッション(景気後退)入りし、株価は36%の大幅安となった。中銀の手ぬるい対応の危険を示す教訓だ。