4月には、福岡県福津市でも、母子2人暮らしの自宅で、病死後2ヵ月ほど経った88歳の母親の遺体が見つかり、やはり同居していた61歳の息子が死体遺棄容疑で警察に逮捕される事件が起きている。

 5月28日付の毎日新聞西部版によると、母子は父親の死後、母親の年金で暮らしていたと見られ、息子は約2キロ離れたスーパーまで散歩するのが日課だった以外、家に引きこもり状態にあったという。

 また、息子は「母親が亡くなって、どうしようもなくなった」という趣旨の供述をしていたといい、自分からコミュニケーションを取って支援を求められる状態ではなく、行政や周囲も家庭内の異変には気づきながら対処できないでいたようだ。

苦境を相談できずに
亡き親の年金で命を繋ぐ

 筆者も、個別に「親が亡くなって、これからどうやって生きていけばいいのかわからない」「手続きはどうすればいいのか」といった相談をメールなどで受ける。そうやって具体的に困っていることを相談してもらえれば、地域の自治体の相談窓口や社会資源、当事者家族会などに繋ぐこともできる。都合が合えば、筆者が同行することもある。

 しかし、引きこもる本人も家族も悩みを隠していることが多く、親亡き後に1人残された本人が、生きていく意欲や意義を持てずにいたり、助けを求めることができない状態だったりすると、親の年金をもらい続ける以外の選択肢を選べない人もいる。

 1月に札幌市のアパートで80代の母親と50代の娘の遺体が見つかったケースでは、親亡き後、部屋に現金が残されていたのに娘は生きることができなかった。母親は「他人に頼りたくない」と支援の申し出を拒んでいた。このような親子共倒れは、氷山の一角だと言える。

 これまでの行政の「ひきこもり支援」といえば、とかく「不登校対策」に力を入れたり、主に30代までの「若者就労支援」に主眼を置いたりしてきたが、現実に起きていることの深刻さを見れば、もはや若者問題ではない。