ここで気になるのがBさんの「他の女性との相性も試してみたい」という言い回しである。これは、下衆な表現になるが「他の女性も味見してみたかった」という意味なのであろうか。
「それは全然違います(笑)。もっと性格的な方面の話です。妻はおっとりとした女性らしい女性ですが、『もっと活発な女性が相手だったらどうだったんだろう?』とかそういうことです。性欲は妻がいるのでその点不満はないですし。
他の女性への興味は、目の保養にするくらいが限度です。エッチな動画くらいなら見ますが。リアル(生身)の女性には性欲湧いてこないですね。
円満な家庭、平和な人生が自分の目標なので、女性関係で遊ぶのとかはそこからだいぶ外れてしまうというのはあります」
胸に決めた目標に向かって邁進するのに必要なのは精神力で、一方性欲は本能に属する勝手な衝動である。女性関係の遊びを遠ざけようとするBさんの姿勢は彼の精神力が実現し得たものなのだろうか。Bさんは自制心が並はずれて強いのだろうか?
「自分ではあまりそういう感じはありませんが…。割と楽な方に流されるタイプなので」
ということは「Bさんの性欲は抑制に苦労するほど強烈なものではない」といえよう。
散々遊び尽くして、酸いも甘いも裏も表も全部知っておくと人間性に厚みが出て、その上で丸く落ち着いた人は貫禄がある…という美学はかねてより、日本男児の間でうっすら通底してきたように思うのだが、Bさんのような姿勢・目標はまごうことなきニューウエーブである。若い世代で支持されるのは“遠回りしてさまざまな経験を積んでいく苦労人の格好良さ”より、“目的地に向かって最短ルートを見極め合理的な選択をするスマートさ”なのかもしれない。
それもこれも、性欲がスマートさを邪魔しない程度に低下してきているから可能であると見ることはできまいか。
純愛アニメオタク
“性欲を向けるべき相手”とは
Cさん(23歳男性)は自称アニオタ(アニメオタク)で、生身の女性に対してはある種、“崇敬の念”を抱いているという。また、経験がまだないセックスに対しては、神聖化するほどの憧れがある。