クシュナー氏がパイプ役

 それでもトランプ氏は、大統領に就任する前からサウジとの関係改善を検討していた。事情に詳しい関係者によると、サウジ当局は2016年の政権移行期間中にトランプ陣営に接近し、関係改善について米側の意向を打診してきたという。

 この提案に前向きだったのがクシュナー氏だった。同氏はイランの影響力排除や過激派組織「イスラム国」打破など、米国の掲げる目標でサウジと協力することを望んでいた。クシュナー氏は早い段階でムハンマド皇太子とのパイプ役となった。両者はともに30代で、大きな影響力と権力を持っている。

 トランプ氏は彼らのことを「仲が良い2人の若者」と称していた。

 ある関係者によると、元政府当局者らはメッセージサービスのワッツアップで連絡を取り合っている2人の関係を個人的かつ親密だと表現していた。ホワイトハウス当局者はクシュナー氏が外国の指導者と連絡を取る際には「(外交)儀礼とプロセス」に従っていると述べた。

 元政権関係者によると、米国の安全保障当局には、クシュナー氏が担う役割を不快に思う向きもあった。こうした人々は、ムハンマド皇太子に対応するのに適切なのは、国務長官か国家安全保障担当補佐官だと考えていた。一方、元国家安全保障担当補佐官のH・R・マクマスター氏などは、当初はサウジが米国への約束を果たすことに懐疑的だったかもしれないが、クシュナー氏がこうした役割を担うことを比較的受け入れていたという。

 ムハンマド皇太子は昨年ワシントンを訪問した際、国防総省で米当局者と非公式に会談し、テロについて話し合った。会談に詳しい人物によると、一部の当局者は皇太子がイランに焦点を向け過ぎると感じていた。すると、マクマスター氏が発言し、米同時多発テロのハイジャック犯にイラン人は1人もいなかったことを指摘する場面があったという。

 関係者らによると、サウジとの関係が深まるなか、クシュナー氏以外の米当局者もムハンマド皇太子との接触を増やし始めた。その中にはマクマスター氏やマイク・ポンペオ国務長官が含まれる。マクマスター氏は昨年、皇太子を自宅に招いて夕食を共にしたという。

 だが、カショギ氏殺害が厄介で複雑な事態を招いた。事情に詳しい人物らによると、10月10日にムハンマド皇太子とクシュナー、ボルトンの両氏との間で行われた電話会談は張り詰めた雰囲気だった。両氏は皇太子に対し、透明性の高い調査を行い、事実を迅速に公表するよう促したという。