格差や貧困問題の是正が放置されているうちに、「アンダークラス(パート主婦を除く非正規労働者)」が900万人を突破、日本は「階級社会」への道を突き進んでいる。中でも「中間階級」が崩壊、新たな貧困層が生まれてきた。それは、どん底一歩手前の「マイルド貧困」とも呼べる新たな階級だ。そこでDOL特集「『マイルド貧困』の絶望」第12回は、「和楽器を知ってもらいたい」と海外公演を行うものの、収益はわずかで赤字に陥っている「マイルド貧困バンド」の実態を追った。(ライター 横山 薫)
タレント活動を応援してくれていた
父の死をきっかけに上京
「海外の方に和楽器バンドを知ってもらいたい」
その思いから、ベース、ドラム、ギターのほか、三味線と篠笛をメンバーに加えた和楽器ポップス・ロックバンド「神紅桜Jill」(シンクオウ ジル)。そのボーカルを務める英里さんは、リーダーとしてバンドを引っ張っている。
最近では、台湾を始めとする海外でのフェスやライブハウスに呼ばれライブ活動を行う彼女たちだが、海外遠征では身銭を切ることが多く、収入はとても満足できるものではないという。
「高校卒業後、手取り11万円の地元企業で働いていましたが、両親は私にタレント活動をしてほしいとずっと思っていたみたいで、『タレントになりなさい』と応援してくれていました。そんなとき、新聞に掲載されていたタレント事務所の広告を見て自分で応募。とんとん拍子で合格し、タレント養成所で演技やダンスなどのレッスンを受けることになったんです」