「うちの子はダウン症」
友人の涙声が忘れられない
「うちの子、ダウン症だったの。昨日、病院で言われたの。1年間分からなかったのよ。こんなにかわいいのに。ううん、ダウン症の子はかわくないってわけじゃないの。でも信じられない。急に言われても。どうしたらいいか分からない」
電話の向こうで、涙ながらに語っていた友人の声を、千晶さん(仮名・38歳)は時々思い出す。彼女とは妊娠中に参加した、女性限定の異業種交流会で知り合った。お互い妊娠5ヵ月ということで会話が盛り上がり、その後も電話し合う関係になった。そして、ほぼ同じ時期に長男を出産。育児と仕事の両立に追われる中、1歳児健診に出かけてきた千晶さんは、1年間のお互いの頑張りを褒め合おうと思い立って電話し、衝撃の告白を聞かされたのだった。
友人が赤ちゃんを連れて行ったのはわりと大きな病院だったが、「お子さん、ダウン症ですね」と告げられただけで、その後、どうしたらいいか等のアドバイスは一切なかったらしい。
「どういうことでしょうって聞いたらね、『先天的な疾患ですよ。染色体の異常によって起こります。本来、染色体の数は2対23組、計46本なのですが、ダウン症のお子さんの場合21組目の染色体が1本多く、合計47本になっています。約半数に先天的な心疾患があり、同じく半数近くに難聴や乱視・遠視などの目の異常が見られます。気を付けてあげてくださいね』ですって。それだけなのよ。もろ、ひとごとでしょ。私はどうしたらいいのか、具体的なアドバイスが欲しかったのに。診断結果だけ告げられて、放り出されたの」
一般的に、ダウン症の子どもは、外見上、「丸く起伏が少ない顔」「目の端のつり上がり」「小さめの耳」など共通した特徴が見られる。小児科医であれば、一目で察しがつくだろう。友人の赤ちゃんを診た医師は、彼女が既に、わが子のダウン症を知っているという前提で話したのかもしれない。
だが、彼女は知らなかった。