JR北海道はいまだに国鉄時代の
運賃水準を引きずっている

 JR北海道が抱え込んださまざまな矛盾には、当然株主である国の責任もある(詳しくは「JR北海道の苦境は一体どこに原因があるのか」参照)。北海道や沿線自治体が消極的だという批判もあるが、ない袖は振れないのが現実だろう。もはや何がニワトリで何が卵か分からなくなるほどに問題の根は深い。

 だからこそ、負担の見直しはもっと早く進めておかねばならなかったのだ。JR北海道経営破綻問題の本質は、危機が表面化するまで根本的な議論を先送りしてきたことにある。運賃値上げはその象徴的な問題である。

 意外に思われるかもしれないが、JR各社が過去30年間に実施した値上げは、消費税の導入や税率引き上げに伴う運賃改定を除けば、1996年にJR北海道、JR四国、JR九州の三島会社が行った1度だけだ。この時、JR北海道は平均7%の値上げを行っている。

 しかし、JR北海道の運賃水準は、他社と比べて決して高いとはいえない。むしろ割安である。道内で唯一、競合関係の鉄道事業者である札幌市営地下鉄の初乗り運賃が200円なのに対して、JR北海道は170円だ。

 同社の乗客1人あたりの平均利用距離は約30km、幹線普通運賃では540円になる。ところが、完全民営化を果たしたJR九州はJR北海道より高い550円、JR四国は560円だ。東京圏を見渡してみても、つくばエクスプレスの670円、北総鉄道の830円などJR北海道よりも割高な通勤電車が存在する。

 定期券の割引率でも大きな違いがある。JR北海道の約50%(通勤1ヵ月)に対して、札幌市営地下鉄の割引率は約30%(同)である。両社線が並行する札幌~新札幌間の運賃を比較すると、JR北海道は8390円、市営地下鉄は1万3390円と5000円もの差が生じている。

 この水準まで値上げできると言いたいわけではない。必要になってから一気に値上げすることはできないのだから、経営状況に見合った運賃水準まで段階的に値上げをしておくべきだったのである。なぜそうすることができなかったのだろうか?

 話は国鉄民営化までさかのぼる。国鉄末期、地方ローカル線は次々と廃止され、毎年のように値上げが繰り返された。民営化によってさらなるサービス切り捨てと負担増が起こるのではと不安視する国民に対し、自民党はローカル線や長距離列車は維持、運賃の据え置きという「公約」を掲げて、民営化推進を訴えた。

 この公約は多くがうやむやになったが、こと運賃に関しては、政府もJR各社も極めて抑制的であり続けた。定期券についても、徐々に割引率を引き下げてきた私鉄に対し、JRは国鉄時代の運賃水準を据え置いてきたので、30年で大きな差が開いてしまった。