JR北海道の経営問題がクローズアップされている。国や北海道、沿線自治体に支援してもらえなければ、全路線の約半分を廃止せざるを得ないというが、そもそもJR北海道の経営はなぜ、ここまで悪化してしまったのだろうか?(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
収支が改善しなければ
全路線の半分が廃止の危機に
JR北海道の苦境が続いている。2017年度の連結決算は106億円の経常赤字となり、2016年度の103億円に続いて、2期連続で過去最悪を更新する大変厳しい結果となった。
2013年に特急列車からの出火・発煙が相次いで発生、さらに貨物列車の脱線事故について、線路検査データの改ざんや異常箇所が未補修のまま放置されていたことが発覚。従業員の不祥事も相次ぎ、安全管理と企業体質に疑念の目が向けられたことは記憶に新しいだろう。
事故を受けて特急列車の減便、スピードダウンを伴う異例のダイヤ改定を実施したことで鉄道運輸収入は減少。一方で安全対策として設備投資や修繕を拡大したため営業費用が増加し、さらに2016年3月の北海道新幹線新函館北斗駅開業に向けた準備費用も重なって、営業損益は大幅に悪化した。
2016年7月には経営状況が極めて厳しいとして、一部の路線の廃止や経営形態の見直しを含めた「持続可能な交通体系のあり方」の検討を提起し、経営問題が一気に表面化することになった。
今年4月からJR北海道は経営再生に向けて、国土交通省、北海道、北海道市長会、北海道町村会、JR貨物との6者協議を開催している。6月17日に行われた第2回協議で発表された「経営再生の見通し」で、北海道新幹線の札幌開業が予定される2030年度まで国と北海道、沿線自治体に対して支援を求めたが、沿線自治体の財政状況は厳しく、財務省も長期の支援に難色を示しているという報道もある。
収支が改善しない場合は全路線の約半分にあたる区間が廃止、バス転換される可能性もある。国土交通省は夏までに公的支援策をまとめたいとしている。
ここにきて風雲急を告げるJR北海道の経営問題は、今月に入って全国紙でも大きく取り上げられるようになってきた。これから夏に向けて議論が本格化するに当たって、今さら聞けないJR北海道問題の経緯と基礎をおさらいしておこう。