大塚 会計士は、ポジションにかかわらずプライドがあるので、長時間労働を厭わない気質があります。どんどん増えていく監査手続きを、ど根性で終わらせようとするため、労働時間が増えていたんです。

小室 なるほど。そういう背景があったわけですね。

大塚 そんな中で、長時間労働に耐えられない人が退職していきました。10年くらい前まで、本当に優秀な人は長時間労働を理由に辞めていなかった。仕事の内容や報酬を理由に、もっといい条件の職場に移る人は多かったですが、長時間労働が退職の理由にはならなかったんです。

 ところが、2、3年前から、優秀層も「自分の時間が取れない」ことを理由に退職する傾向が出てきました。このあたりに時代の変化を感じました。弊社としても、何らかの手を打つ必要を感じ、本格的に働き方改革に着手したのが2年前。そこで2016年2月に、小室さんにも幹部用の講演をいただいたという経緯です。

小室 「優秀層」ほど、自分の成長のための時間を取らなければという危機意識も強いのでしょうね。

トップの言葉が伝わりにくい
マトリックス組織の特徴

大塚 ビジネスモデル上の特徴も背景にありました。監査法人は、普通の会社と違って完全にピラミッド型じゃないんですね。普通は、部や課があって、常に同じ部下を抱えているわけですが、監査する対象の企業ごとに1つのプロジェクトになって1~2ヵ月の単位で動きます。

小室 その都度、プロジェクトが解散するわけですね。

大塚 事業部という組織はありますが、普段はプロジェクト単位で動いているので、そういう意味ではマトリックスな組織です。つまり、トップの言うことがそのまま素直に伝わらない組織なのです。

 3年前の時点でマネジメントのあり方を変え、「監査の品質とは何か」を問い直し、結論は「間違った数字が世の中に出るのを止めることである」という確認はしていました。しかしその「浸透」が難しかったんです。そこで、小室さんの会社にも力を借りて、具体的に「業務面」でも多くの見直しをしました。