組織への忠誠は、
仕事内容やメンバーへの忠誠へ

 かたや「忠誠」の一筋はどうか。すでに終身雇用はほぼ崩壊しており、同じ会社で40年というのは難しい時代に突入している。特定事業、特定のグループに対する忠誠もまた然りである。 

 しかし、仕事に対する忠誠や、そのときどきのプロジェクトやチームで一緒になったメンバーに対する忠誠こそは値千金である。これは盲目的に組織や上司に従うという意味ではなく、当事者意識を持ってベストを尽くすということであり、周囲の人は、必ずその仕事に向かう姿勢やチーム・メンバーとの連携の姿を覚えていて評価してくれている。

 より多くの人が流動的に組織を超えて仕事をするようになると、いろいろなところで、前の仕事で出会った人と再び組むということが起こりうる。その人が本当に、仕事に対して、そしてメンバーに対して、忠誠心を持って取り組む人なのかどうかという評価が、業界の内外で広まるのである。その人の仕事の能力やスキル、行動思考様式を最も正当に評価できるのは、なんといっても一緒に仕事をしたことがある人だ。

 このことからも、「忠誠」のあり方は、組織や上司に単に盲目的に従い、会社に奉仕する、長いものには巻かれよ的な態度を脱し、仕事とメンバーへの忠誠に変わっていくだろう。

 無条件で組織への忠誠を強いられる不合理に比べれば、仕事やメンバーへの忠誠が評価されることは、プロフェッショナリズムという点ではずっと喜ばしいことだ。

 このように、状況が大きく変化していることから、近い将来、「一筋が尊い」とは社会で言われなくなるだろう。しかしながら、これまで「一筋」が体現していた価値、すなわち「卓越」と「忠誠」は形を変えて生き残る。深く考えることなく、昔ながらの「専門一筋」「組織一筋」を奨励している会社は、早めに方向転換し、その基本的な考え方やものの言い方を変えなければならないのだ。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)