取締役に対する金銭報酬計16.5億円のうち、ゴーン氏と西川氏の2人で計12.34億円なので、他の取締役は4.2億円しかもらっていない。1人当たりでは1億円にも満たない報酬であり、ゴーン氏と西川氏との格差は大きい。

 ゴーン氏は実際には、20億円近くもらっていたと報道されているので、格差はさらに拡大する。

有価証券報告書の虚偽記載
立件される可能性

 率直にいえば、取締役各人の会社の業績に対する貢献がわからない以上、合理的な算定は困難だろう。より客観的に配分するためには、わかりやすいい業績連動型のほうが望ましいのではないか。

 米国の企業でも役員の高額報酬が話題になるが、業績連動型であれば説明はより容易である。いずれにしても、最終的には株主総会の議決があればいいので、適正なプロセスでクリアすればいい。

 もっとも今回の場合には、ゴーン氏自身は「否認」しているようだが、担当者を通じて虚偽の報酬額を記載したということなので、弁解の余地はほとんどない。

 一部の報道によれば、ゴーン氏の報酬で虚偽記載されていたのは、株価連動型インセンティブ受領権ということで、実際の支払いはまだされていないともいわれている。

 そうした部分を有価証券報告書で記載すべきかどうか、もともとの議論はあるかもしれない。

 しかし、日産の有価証券報告書(下図)には、(注)として、株価連動型インセンティブ受領権について、「会計上の費用」、「支払いが確定されたものではない」と、書かれた上で、項目として載せられている。

 したがって、まだ支払いは受けていないから虚偽記載ではないという主張は通りにくいのではないか。

 有価証券報告書の虚偽記載といっても、仮に報道通りに、年間10億円の記載漏れがあったとして、日産の年間利益7500億円に比べれば、あまりに小さい。

 10億円は大きいが、有価証券報告書としては軽微な記載漏れという見方もできるかもしれない。

 だが、有価証券報告書の虚偽記載は立派な犯罪になり得るし、特別背任や脱税の疑いも含めて司法の場できちんと処理されるべきだろう。

 またメディアが報じているように、こうしたことが起きたのは、ゴーン氏の強欲さなども要因としてあったのだろう。

 だが、筆者には、こうした問題のほかに、この事件の背景には、いろいろ複雑な力学があるように思える。