検察や日産がリークを連発する一方、ゴーンサイドからの情報がほとんどない現在、あのウォール・ストリート・ジャーナルですら、ゴーンはハメられた的な「陰謀論」を展開する事態になっている。さらに驚くのは、永田町界隈でまことしやかにささやかれる仰天の陰謀論だ。(ノンフィクションライター 窪田順生)
米有力紙も「ゴーン擁護」へ
国内外に広がる陰謀論
「ありゃ裏でもっと悪いことしてるぞ。コストカッターとか言われてた時から、俺は怪しいと思ってたんだよ」「いやいや、あれはハメられたんだって。日本人の側近がルノーに吸収されないように起こしたクーデターらしいぞ」――。
世界に激震が走った逮捕劇から10日、部下にハメられた哀れな外国人リーダーか、強欲な独裁者かという「ゴーン論争」は、今やすっかりサラリーマンたちの「酒の肴」として定着した。
この「メシウマ状態」に拍車をかけているのが、GT−Rを会社からタダでもらっていた、なんて調子で、日産や東京地検特捜部からせっせと毎日のようにリークされる「しっくりこない話」だ。
ゴーンのしょうもない悪事を聞けば聞くほど、「監査役もいる上場企業なのに、なぜここまで見抜けなかったのか」とモヤモヤが深まる。そのためか、海外ではすっかり、ゴーンはハメられた的な「陰謀論」が広まっている。
例えば、26日の米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)でも、「中国で起きたことかと思った」と揶揄したほか、「島国特有の閉鎖的な企業文化」「日本の経済界に汚点を残す」との論調を展開するなど、露骨に「ゴーン擁護」へと舵を切っている。
もちろん、この手の「陰謀論」は国内でも飛び交っていて、中には、落合信彦氏の国際スパイ小説も真っ青のストーリーも聞こえてくる。そこで本稿では、その一部をご紹介していきたい。
「フェイクニュースを撒き散らすな!」と怒り出す方もおられるかもしれないので、言い訳をさせていただくと、「陰謀論」というものの多くは「情報の飢餓」が原因である。
ネットでカモを探す怪しげな自己啓発セミナーが、「大手マスコミが報じない」なんて宣伝文句を多用するように、「陰謀論を語るのは危険だ」とみんなが“お口にチャック”をすると、かえって「陰謀論」の価値を高めて、それを広めることとなってしまうのだ。
また、火のないところに煙は立たぬではないが、「陰謀論」にだってささやかれるだけの理由はある。信じるも信じないもあなた次第、と話半分のエンターテイメントとして楽しんでいただきながら、そのバックグラウンドを読み解くことは、むしろデマやフェイクニュースに惑わされない情報リテラシー向上の役に立つのではないだろうか。