かろうじて伸びているのは女性用スーツやオーダーメード市場だ。ただ、オーダーメード市場は、ZOZOがオーダーメードスーツに参入し、大手アパレルも注力するなど、小さな市場でプレーヤーが一気に増えたため、競争環境は厳しくなっている。

 さらに過剰な出店でロードサイドの郊外店で競争が激化。「自社の店の近くに他社の店舗があれば、その商圏内に店舗を建ててつぶす」(紳士服大手関係者)と、コンビニチェーンのようなつぶし合いが横行している。

スーツの逆境を複合カフェで
食いつなぐAOKIの勝算

 大手が最終赤字に陥る中、今回の決算では事業多角化で明暗が分かれた。

 実は、青山商事とAOKI HDは数年前より、スーツ一本足打法から多角化の方向へかじを切っている。ただ、両社の戦略はかなり違っている。

 青山商事はあくまでもアパレル事業中心の多角化だ。

 先に述べたロードサイド店の競争において、撤退する際も良い立地を他社に取られないように、ライセンス契約した米カジュアル衣料の「アメリカンイーグル」の店舗に転換したり、100円ショップや飲食店などを傘下に置いて出店するなどしている。

 しかし、今期はアメリカンイーグルなどのカジュアル衣料で4億円の営業損失が出ている。「スーツよりカジュアル衣料に目を向けたのはよかったが、参入が遅過ぎた。しまむらがEコマース(EC)に食われたことから分かるように、カジュアル衣料は最もECに食われる分野だった」と楽天証券経済研究所の窪田真之チーフストラテジストは分析する。

 スーツを守るために始めた事業で損失を出しては本末転倒だ。とはいえ、アメリカンイーグルとの契約はあと3年残っており、引くに引けない。利益を出しているカード事業も、スーツありきのビジネスモデルであり、苦しい戦いが続きそうだ。