「脱スーツ」ならぬ
「脱アパレル」が生き残りの道に

AOKI HD子会社が運営する複合カフェ「快活CLUB」 Photo by Rumi Souma

 一方、AOKI HDは、スーツ事業を拡大する方針ではなさそうだ。中村宏明AOKI前社長の肝いりで始め、業界初となった紳士用スーツの定額制サービスも、18年9月末、中村氏の突然の更迭と時を同じくして撤退が決まった。スーツ事業の方向性は、新しいものを立ち上げるというよりは、“現状維持”。創業者の次男の青木彰宏AOKI HD社長は、むしろ非スーツ事業の割合を上げることに力を入れているという。

 その取り組みは「脱スーツ」ならぬ「脱アパレル」だ。

 今のAOKI HDを支えているのは、実はマンガ喫茶とネットカフェの複合カフェ施設である。複合カフェはここ数年で淘汰が進み、AOKI HD子会社のヴァリックが運営する「快活CLUB」が業界最大手となった。今期はスーツを含むファッション事業が15.8億円の赤字であるのに対し、複合カフェ事業は17.5億円の黒字で、ちょうど紳士用スーツ低迷の穴を埋めている状態だ。

 その他AOKI HDはブライダル事業の「アニヴェルセル」やカラオケ事業も持っている。サービス業は今後人件費の高騰も予想され、かつ景気に大きく左右される業種だ。だが、「いずれも今は市場が飽和しているが赤字ではない“金のなる木”だ」(窪田氏)。AOKI HDだけでなく、はるやまHDも教育事業や飲食事業への事業拡大が急ピッチで進む。

 紳士用スーツ市場はバブル時代に記録した8000億円のピークから2000億円台にまで落ちており、労働人口の減少から考えても回復の見込みは全くない。大手紳士服メーカーの「スーツ離れ」は、もはや避けられない流れとなりつつある。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相馬留美)