2012年5月6日、欧州では様々な形で民意が示された。ギリシャ総選挙では連立与党が過半数を獲得することができず、その後の連立交渉もうまくいかず、6月再選挙となることが決まった。

ユーロ圏内ではないが、ロシアでは翌日の大統領就任式を控え「反プーチン」の行進が大規模に行われ、多数の逮捕者が出た。そしてフランス大統領選挙では、ドイツのメルケル首相と共に、欧州金融財政危機の収拾にあたってきたサルコジ氏が敗れ、社会党のオランド氏が当選した。

本稿では、フランス大統領に就任したオランド氏の提案する新た政策の方向性が、現在のユーロ危機を解決に導けるのかどうかを焦点に、昨年10月末のギリシャ危機以降の一連のプロセスの中で、今回第2ラウンド入りしたと思われる欧州金融財政危機の今後を展望したい。

緊縮財政政策への
政治的逆風

ひばら のぶひこ/1988年東京大学教養学部卒、2002年コロンビア大学大学院博士課程修了(経済学Ph.D.)。東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)、コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所助手、世銀コンサルタント、通商産業研究所(現RIETI)客員研究員、サスカチュワン大学(カナダ)ビジネススクール助教授、立命館大学経営学部准教授などを経て2011年9月より現職。

 昨年末2011年12月の拙稿「ユーロ危機は世界不況に発展するか-ポピュリズムが金融危機のトリガーに-」において、中期的シナリオの一つとして提示した、ギリシャ議会選挙及びフランス大統領選挙で、緊縮財政政策が信認を得られず、ユーロ体制が政治的・社会的に耐えられなくなるという可能性がより現実味を帯びてきた。

 そして、選挙後の金融市場の反応をみると、拙稿で強調した「政治が経済を動かしてしまう」状況がより深刻となっている。政治指導者、特に独仏の指導者の覚悟・役割が非常に重要な局面となってきた。

 選挙という形で、はっきり財政緊縮策へのNoが突きつけられたのが5月6日のフランス及びギリシャでの選挙結果であった。ただ、それに先立つ4月23日には、オランダにおいても提案されている財政緊縮法案に対して、それまで閣外協力していた自由党が受け入れを拒んだため、ルッテ首相率いる連立政権が崩壊(次の総選挙は9月)した。