駆け込み需要が工事費の高騰を招く?
「高い、遅い、質が悪い工事」を買わされる危険

 消費税が上がるときに、必ず耳にする言葉がある。「駆け込み需要」だ。

 増税時にはさまざまな業界で駆け込み需要が多く見られるが、大規模修繕工事でもその傾向は数値として表れている。これについても、前回の増税時を例に説明しよう。

 国土交通省が発表している「建築物リフォーム・リニューアル工事調査報告」の数値をまとめたものを見ると、2013年上期は2012年下期に比べて、実に7割近く受注高が増加している。

 2013年上期の数字が突出している理由は、前述の経過措置の期日である3月31日までに、大規模修繕工事の契約が殺到したためだ。これがいわゆる駆け込み需要だ。工事業者にとっては、言ってみれば“バブル”の到来である。

消費増税前の駆け込み需要

 では、この駆け込み需要によってどんなことが起こったのか。

 この時期には、経過措置の期間に間に合うように大規修繕工事の発注が駆け込みで殺到したため、どの工事業者もキャパシティーを超える規模で工事を受注していた。私が聞いたなかでは、「キャパシティーの150パーセントで受注したよ」というところもあったほど、大変な過熱ぶりだった。

 工事業者にしてみれば、黙っていても十分すぎるほどの工事を受注できる状態なわけで、仕事を取るために工事費を安くするという通常の操作をする必要はまったくない。反対に、通常より工事費を高く見積もるような工事業者も出てきたくらいだ。ところが、そんな見積りでも工事を受注できたというから、まさに“バブル”である。

 その結果、消費税自体は5%のままだったが、工事費が何割も高くなり、増税分の3%を超えるような割高の工事発注になってしまったというケースも数多く見受けられた。加えて、足場に使う鉄骨や建築資材、職人の人数などにも限りがあるため、工事が遅い、工事の質が悪い……というマンションが散見された。

 増税を避けようと焦るあまり、「高い、遅い、質が悪い工事」を買わされることになってしまったのである。