「俺、専業主夫になりたい」
失業した新婚夫から告げられた
祝福のシャワーを浴び、幸福の絶頂にいたのはつい半年前のことだ。それなのに、千鶴さん(仮名・25歳)は今、先がまるで見えない、暗いトンネルの中にいる気分を味わっていた。
6歳年上の夫・正(仮名・31歳)さんと結婚し、意気揚々と新生活をスタートした矢先、正さんの事業が失敗してしまい、生活費の担い手はいきなり千鶴さん1人になってしまった。
ただ、千鶴さんはポジティブであり、非常に優秀でもあった。年上の青年実業家との結婚とはいえ、養ってもらうつもりはなかったし、現時点での自分の稼ぎはたいしたことないが、いずれは実力を認められて大出世なり起業なりする予定でいた。だから、限られた収入でのつましい生活も決して苦ではなかった。
「大丈夫。リベンジしようよ。応援するから」
笑顔で励ましたのは、夫の才能とやる気を信じていたからだ。なにせ結婚したばかり。愛する新妻のためにも、死に物狂いで頑張ってくれるはずだと思っていた。しかし、夫の反応は意外なものだった。
「そうだね。でも俺、べつに男が頑張らなきゃいけないとは思っていないんだよね。専業主夫になってチイちゃんを支えようかなぁ。憧れなんだよね、3食昼寝付き生活って。安心して。家事は全部やって、内助の功で支えるから。俺、独り暮らしが長かったから、家事能力はそのへんの女より断然高いよ」
真顔で言う。