この秋、経団連の中西宏明会長が就職協定に基づく採用活動・就職活動のルールの廃止を決定したことが大きなニュースとなりました。「一日でも早く優秀な人材を確保したいという企業の強い思い」と、「学業に専念する環境整備」の微妙なバランスの上に定められていた従来のルール。その廃止は、外資系企業や新興企業に人材確保で後れを取りたくないという経団連の大きな決断であり、組織としてはある意味当然のことでしょう。
私は、2015年より奈良県生駒市長として、人材確保に向け様々な施策を展開してきましたが、行政の世界では、一日も早く優秀な人材を確保したいという想いを強く感じる自治体は数えるほどしかないのが現状です。採用説明会すらしない自治体の方が多い現状では、地方創生なんて夢のまた夢です。
どうして自治体の採用はこのような状態になっているのでしょうか。その理由は大きく2つです。
採用に力を入れても首長の評価につながりにくい
第一に、採用に力を入れても首長(都道府県知事、市区町村長)の評価につながりにくいからです。首長の任期は4年。採用に力を入れても年功序列の強い行政組織において、採用した新人職員が成果を上げ始めるのは少し先の話です。首長にとっては、選挙にプラスにならないと考えられているため、採用業務に力を入れるモチベーションが働かないのです。
もう一つは、自治体の業務の特性です。これまでの自治体は、国に指示されたり、制度に定められた方針をミスなく確実に遂行することが最大の仕事でした。したがって、創意工夫や行動力というよりは、確実性や事務処理能力が必要とされてきたのです。このような業務であれば採用に力を入れなくても何とかなっていました。なぜなら、「転勤がない」「安定した地位や身分制度」などの雇用条件に魅せられた学生が一定数受験し、それなりに事務処理能力のある人材を採用できてきたからです。