恐ろしいことに、これらは氷山の一角にすぎないという。数億円から数十億円の詐欺が日々発生していると言っても過言ではない。警視庁で把握している被害届け出は年100件程ともいわているが、ほとんどが立件されていない。警察の腰は重く、もし、事件を受け付けたとしても捜査は遅々として進まない。

 捜査に専門性が必要なのも原因のひとつだが、事件が巧妙にしくまれ、立件が難しいことを読み進めると痛感するだろう。

地面師は案件ごとに10人前後で構成
名の知れた「法律屋」も存在

 積水ハウス事件で大量検挙されたように、地面師は案件ごとに10人前後で構成される、欺しのプロ集団である。全体の絵を描くリーダー、パスポートや免許証など書類を偽造する「印刷屋」、振り込み口座を用意する「銀行屋」。そして、「なりすまし役」。年格好はもちろん、矛盾なく、話ができるかまで事前にリーダーが面接する。振る舞いはもちろん、捜査が自分たちに及ばないような人物かも判断する。地主役に認知症気味の老人をあてるケースも少なくないとか。彼が捕まったところで、本人が半分呆けていれば、喋りようがない。よく、そんな奴を見つけるなと思うが、地面師チームには「手配師」という、なりすまし役を見つけたり、演技指導したりする役割まで存在する。

 騙す客に売るまでに、複数の売買を重ねることで、事件を複雑にしている。地面師たちで作ったペーパーカンパニーをはさむことが多いが、手数料目的で名前を貸す企業もある。地面師につらなるグレーゾーンに生息している者のいかに多いことか。売買を重ねれば、仲介者なども雪だるま式に増え、関係者が増えれば増えるほど、警察が動いたとしても全体像は見えにくくなる。グレーゾーンの生息者がどこまで詐欺の全容を把握しているかはわからないが「そんなヤバイ物件だとは思わなかった」と善意の第三者を装われれば捜査は暗礁に乗り上がる。

 そんな簡単に騙されるものかと思うのだが、読み進めると驚愕する。地面師グループには「法律屋」が存在し、名前の知れた弁護士事務所や司法書士も片棒をかついでいるのだ。彼らに「依頼され、取引に立ち会っただけ。我々も騙された」と抗弁されれば、犯意を証明するのは難しい。読み手の多くは「ここまでされては欺されても仕方ない」と言葉を失うだろう。