第5回公判で、石橋被告の車に同乗していた元交際女性は「高速道路なので、ひかれて最悪は亡くなると思った」と語っていた。石橋被告をかばうどころか、未必の故意があったと明言したのだ。

 もし成立しないと言うなら、それは未必の故意の不成立ではなく、前述の通り、心神耗弱だった場合であろう。しかし幼稚で身勝手、低い思考レベルではあっても、少なくとも心神耗弱だったようには見えない。

 では、あおり運転で殺人罪の適用はやはり不可能なのだろうか。

 実は7月、オートバイの大学生をあおり運転の末に追突して死亡させたとして、大阪府警が乗用車を運転していた警備員の男を殺人容疑で逮捕。大阪地検堺支部が殺人罪で起訴している。

 前述の全国紙社会部デスクは「(今回の事件発生当時)前例がなかったとはいえ、神奈川県警と横浜地検はあまりに腰が引けていた。確かに検察は前例踏襲主義で、前例がない場合は二の足を踏む傾向にあるが、むしろ前例を作るためにも今回は挑戦すべきだった」と話した。

 そして「殺人罪での起訴のほうが、事件として分かりやすかったと思う。社会的常識を備えた裁判員なら、殺人罪でも理解してくれたと思う。弁護側も無罪主張ではなく、罪の軽減・情状酌量狙いだったかもしれない」と付け加えた。

普及するドライブレコーダー

 この事件を契機に、大きく変わった点が2つある。

 1つは警察庁があおり運転の摘発強化を全国の警察に通達し、摘発件数が飛躍的に伸びたことだ。

 警察庁によると、1~6月に高速道路や一部自動車専用道路で前方の車両と車間距離を詰め過ぎたなどとして摘発した件数は6130件に上り、昨年同期の3057件から倍増した。一部の警察本部はヘリコプターを投入し、警察車両と連携した取り締まりを実施。6月には全国一斉の取り締まりも行ったという。