日本に住む中国人は何も、超富裕層やアルバイトに明け暮れる苦学生、繁華街の住人ばかりではありません。むしろ、一般的な日本人と同じ社会人としてキャリアを積み、世の中に溶け込んでいるのです。労働者を選ぶ側だったのが、いまや“選ばれる側”に立っている日本。そんな日本で働く、在日中国人の実像に迫ります。(本記事は週刊ダイヤモンド2018年7月7日号からの抜粋です)
今から40年前、大躍進政策と文化大革命で疲弊した中国経済を立て直すために、鄧小平が市場経済体制を目指した改革・開放路線。この改革の象徴の一つとされるのが、10年間の中断を経て1977年に再開された大学入試だ。
再開してから4年目の80年に大学入試を受け、超難関をくぐり抜けて上海の外国語大学に入学したのが、日本の大手総合商社に中堅幹部として勤務する川口佳子氏(仮名)だ。中国・福建省の出身で、2007年に日本に帰化した川口氏がその当時を振り返る。
「政府の計画経済の下、大学の募集も専攻も全て計画的でした。日本語を習いたくて日本語科に入ったのではなく、これから日本語の通訳が大量に必要になるからという理由で振り分けられたのです。国から生活費を支給され、就職先も全て決められており、84年に卒業した後に就職先としてあてがわれたのが貿易会社でした」
結果として、このあてがわれた就職先が、現在の川口氏のキャリアを決定づける。