「クリエイティブツール+マーケティングツール」という独特な製品構成を持つアドビ システムズ。その日本法人社長が今年交替した。新社長のジェームズ・マクリディ氏は前職時代に4年間日本に住んでいたこともあり、日本のIT市場に精通した人物だ。新天地での抱負と目下の課題を聞いた。
日本企業は顧客体験を
もっと改善したいと願っている
アドビ システムズ
日本及びAPAC(アジア太平洋地域)代表
大学卒業後、1991年から97年まで米国メジャーリーグベースボールの球団でピッチャーとして在籍。その後にIT業界に転じた異色のキャリアを持つ(掌の大きさに注目)。98年からEMC(現Dell EMC)で大手企業向けの営業部門に所属、2006年から米国南部地区担当バイスプレジデント、11年からアジア太平洋および日本地域の営業を統括。とくに12年から16年の4年間はEMCJapanのCOOとして日本に在住。2018年4月よりアドビ システムズ日本法人社長、同12月より現職
――アドビの主力事業の1つであるデジタルマーケティングの分野について、日本市場の成長余地をどう見ていますか。
ジェームズ・マクリディ(以下・略) 私の印象では、日本の中でアドビはクリエーターのためのソフトの会社というイメージがまだまだ根強く、マーケティングなどの顧客体験を広く扱う企業向けソフトウェア企業だということを、もっと知っていただく必要があると考えています。
そのマーケティング分野に対する見方ですが、過去に4年間日本で暮らしていた経験からも、日本にはカスタマーへのサービスが優れている企業がとても多いと感じています。一方で、アドビが調査した結果では、約88%の企業がさらに顧客体験をよくしていきたいと回答しており、改善に意欲的です。そこにデジタルの力を使う余地は大いにあると思います。
――企業内には、Webやコールセンターのログデータ、購買履歴、さらに店舗や製造設備、運輸などのセンサーデータなど、様々なデータが集まっていて、その量は近年爆発的に増加しています。ですがその利用は十分とは言えないのではないでしょうか。
そうです。一例を挙げますと、宅配ピザのドミノピザは、まさしくその課題を持っていました。顧客データが増えすぎ、複雑化してしまったため、古いシステムでは対応しきれなくなっていたのです。何かキャンペーンをしようと思っても、設計と実行に非常に時間がかかる状況でした。そこでシステムを更新し、アドビのマーケティング製品「Adobe Campaign」を導入。施策の検討から実施までの時間を大幅に短縮し、臨機応変にキャンペーンを試すことができるようになりました。テストの結果成功した「雨の日割引」などの施策を繰り返すことで、顧客の購入率を3倍にまで高めています。