ゴーン逮捕後1ヵ月で
表面化してきた主導権争い

 12月17日の取締役会において、日産は2つの方向性を示した。 

 第1に、ガバナンス改善特別委員会を設置すること。独立社外取締役の豊田氏、井原氏、ドゥザン氏3名に加え、独立第三者委員4名の計7名構成とし、ゴーン氏が行った不正の根本要因を解明したうえで、ガバナンスの改善策を提言する。第2に、ゴーン氏の後任となる会長の選任は同委員会の助言を待ち、結果を急がないということだ。ルノーが臨時株主総会の開催を要求する書簡を日産取締役会に送付しているなかで、独立第三者委員での協議結果を優先するという取締役会の判断であった。これは、日産による時間稼ぎにも映る。

 ルノーは日産の9名の取締役会において、独立外部役員を含め3名の指名権を持つと考えられる。これまでは、ゴーン前会長、ベルナール・レイ取締役、ジャン・バプティステ・ヂュザン社外取締役の合計3名であった。ゴーン氏が逮捕された現在では、レイ氏とヂュザン氏の2名しかいない。臨時株主総会を急ぐのは、ゴーン氏を正式に解任し、彼に変わるルノー側の取締役を任命し、日産の取締役会の正常化を急ぎたいという意向であるだろう。それに対し、西川社長は問題の根本原因を究明するガバナンス改善特別委員会の結果を優先すべきと、明らかな対立姿勢を示した。

 ゴーン氏逮捕の結果、取締役会会長と経営最高責任者(CEO)の両方を同時に失ったルノーの経営体制への打撃は計り知れない。その立て直しを図るため、ティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)をCEO代行に任命し、さらに、会長職としてジャン・ドミニック・セナール(現、ミシュランCEO)の抜擢が検討されている。その場合、セナール氏が日産の取締役に就任し、日産の混乱からの再生に関わることは妥当な展開に見える。

 ゴーン前会長とグレッグ・ケリー前代表取締役は役職を解任されたが、株主総会で解任されるまでは引き続き、取締役ではある。つまり、今のところ、9名で構成される現在の取締役会は、実質的に7名で運営されているということだ。日産側に立つのは、西川CEO、坂本取締役、豊田社外取締役、井原社外取締役の4名と考えられる。ルノー側は、ベルナール・レイ取締役、ジャン・バプティステ・デュザン社外取締役の2名に過ぎない。現在の取締役会は、日産側が主導権を持っている。

 ルノーは日産に43%を出資している。「ゴーン氏に代わるルノー側の取締役を任命したい」というのは、筆頭株主としての正当な要求だと考えるべきだろう。