ソフトバンク
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――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 投資家たちが今年最大の新規株式公開(IPO)にいら立っている。

 ソフトバンクグループ(SBG)の国内通信子会社ソフトバンクは上場初日の19日、公開価格を14.5%下回って引けた。SBGは保有株式の37%を売り出し、2兆6000億円(236億ドル)を調達。2014年に250億ドルを調達したアリババグループのIPOに次いで史上2番目の規模となった。

 IPOでソフトバンク株を購入した投資家は、既に34億ドルを失った。だが、売り出し価格が強気だったことから、最初から予想はついていたはずだ。公開価格で計算した企業価値はEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)の8.5倍。これに対し、ライバルのNTTドコモとKDDIは平均5.2倍となっている。株価が下げた後でさえ約7.7倍と、過大評価に映る。

 SBGは資金力のある国内個人投資家を対象とした大々的な宣伝――異例のテレビコマーシャルを含む――により、この高いバリュエーションでの大型IPOを実現させた。純利益の85%を配当に回すと約束し、5%を超える配当利回りが注目された。競合他社の配当性向は40~50%だ。

 国債利回りがほとんど無いに等しいこの国の個人投資家「ミセス・ワタナベ」は、リスクよりも、高い配当や一見安易なリターンに注目することで知られている。例えばビットコインやトルコリラ建て債券といった資産を大量に購入してきた。

 ソフトバンクの魅力的な配当は維持するのが難しいかもしれない。競合のドコモが他国に比べてかなり高い料金の引き下げを発表したことで、値下げ圧力に直面している。また、米国が同盟国にボイコットを求めている華為技術(ファーウェイ)製品の調達削減に追い込まれれば、技術コストが膨らむ恐れがある。ソフトバンクは第5世代(5G)移動通信システム展開でファーウェイと提携していたが、現在は他のサプライヤーを検討中だ。

 SBGは今のところ、このIPOの勝者として際立っている。大幅なプレミアムで株式を売却したため、調達資金で債務を返済したりウィーワークなどの新興企業に惜しみなく投資したりできる。だがSGBは将来的に上場を目指すユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)も幾つか抱える。そしてミセス・ワタナベは、やけどしたことを忘れないだろう。

 SBGは、ソフトバンクでショートゲームに臨んだことを後悔するようになるかもしれない。