著者と読者の「秘密のヒント」
では、その場合の「読者のニーズ」とは何でしょう。
読者は、自分がビジネスの世界で、あるいは人生そのものにおいて成功したいと願っている人たちです。「いやー、私には成功なんか似合わない。ひっそりと生活できればいいんですよ」と思う人は、最初から読者にはなりえないでしょう。
成功のチャンスを探している人は、とにかくヒントがほしい。しかも、根拠に基づいた法則、つまり万人にあてはまるエビデンスではなくて、「著者と自分にしかあてはまらないような秘密のヒント」がほしいのです。たとえば、今、内科医が処方している解熱剤は、エビデンスに基づいて効果が立証されている薬です。適切な量を飲めば、例外なく熱は下がるはずです。
しかし、ビジネスの世界では「これをやれば、例外なくこれだけの効果が出る」ということばかりやっていては、成功には結びつきません。たとえば「東京駅から新幹線に乗れば、約2時間半後には新大阪に着いて商談が始められる」と本に書かれてあったとしても、それはウソではないにせよ、何のヒントにもなりません。
それよりは、「私は新幹線に乗った瞬間から、タブレット(携帯端末)を立ち上げ英語のビジネスニュース漬けになります。これで『グローバルビジネス脳』の準備ができあがり、到着地での商談は100戦100勝という結果を残せたのです」と書かれていたほうが、「なるほど! じゃ、私もBBCのビジネス番組を録画しなきゃ」と、モチベーションが上がります。
「あなたはそれでうまくいったからいいけど、誰もがその方法で成功するわけじゃ……」といった疑問を感じている暇があったら、すぐにでも録画を始めたほうがいい。そう考える人が多いはずです。