人は何かをしたがる生きもの

 人は不安に陥ると、とにかく何かをしたくなる。東日本大震災の後、全国で一時的に買占めに走る人たちが出現しましたが、その人たちも自分だけが得をしたかったのではなくて、あの非常事態で不安が高まり、それを打ち消すためにはとにかくやみくもに何かをせずにはいられなかった。そこで「そうだ、水だ! 防災グッズだ!」と後先考えずに買占めに走ったと考えられます。

 何度も繰り返すようですが、その著者が「新幹線で英語漬け」になっていたからといって、それが本当にビジネスの成功につながるかどうかは、誰にもわかりません。

 でも、何もしないでいると、不安がどんどん膨らんで、自信もなくなってきます。それよりは何かしたほうがいい。どうせ何かするなら、「実際にそれを実行して成功した」という先例があることのほうがいい。そう思う人は、「効果はどうかな?」と頭のどこかで疑いながらも、「いやいや、今は考えずにとにかく英語ニュースのチェック、チェック。これさえすれば、私だってもしかしたらあのIT社長のように……」と夢を見ることができるのです。

 不安を打ち消し、夢を見させてくれるビジネス本。もしかするとこれは、先行き不透明な今の時代、若いビジネスパーソンにとっての最大の「癒し」なのかもしれません。

 それがただの一時的な癒しにとどまるか、それとも本当に人生やビジネスの成功へのステップとなるのか。残酷なようですが、それは、今も昔もやっぱり「その人次第、運次第」ということになるのではないでしょうか。

 「食わず嫌いはいかん」と手に取ってみたビジネス書でしたが、結局、振り出しに戻ってしまったような気がします。読んではみたものの、どうもよくわからない。やっぱり私は「成長」や「成功」といったものとは無縁の「生涯低空飛行人生」を送っているようです。

 これで読書特集はひとまず終わりにします。

 来週からは通常の「ほどほど論のススメ」に戻る予定です。