世界は今、米国発の経済危機に見舞われている。震源地の混乱は、いったいどこまで深刻化するのか。1990年代後半にグリーンスパンFRB前議長を支えたリブリン元FRB副議長に、危機脱出の処方箋と合わせて、聞いた。
アリス・リブリン元FRB副議長(現在はブルッキングス研究所シニアフェロー) |
―米国経済の行方をどう見る?
第3四半期(7~9月)に続き、少なくともこの第4四半期と来年の数四半期はマイナス成長が続きそうだ。その深さの程度はひとえに信用収縮の解消度合いによるので、現時点では明言を避けたい。とにかく今は、どの金融機関も保有資産の価値がつかめず、わずかなリスクすら取ることを避けている。信用力の高い企業や個人でも融資を受けられない状況だ。われわれは“未体験”の領域に入り込んでしまったといっていいだろう。
―金融機関への公的資本注入は効果を見せていないのか。
インターバンク市場金利などのインジケーターを見ると、いくらかは信用収縮が緩和したという兆候はある。ただ、公的資本注入や中央銀行による金融緩和だけで、はたして十分な処置なのかどうかはわからない。デリバティブ(金融派生商品)を通じてリスクがどこにどれくらいばらまかれているのか、あまりに見えないことが多過ぎる。
―大規模な財政出動は必要か。
消費や雇用を創出し、景気の悪化を少しでも食い止める施策が急務だ。
確かに、ブッシュ政権が今春実施した戻し減税(所得税の還付)の効果は限られたものだった。消費者が減税分を貯蓄や借金支払いに回してしまったためだ。同じ過ちを繰り返さないためには、低所得者層に配るフードスタンプ(食料購入券)、失業手当の期間延長、道路や橋などの公共事業を検討すべきだ。
ただ公共事業は効果が表れるまでに時間がかかる。即効性の高いものに集中しなければならない。