右肩上がりの成長が望めない多くの日本企業では、かつてないほどにチームワークの重要性が高まっており、組織をまとめることに苦労するリーダーや管理職は数多い。今回インタビューに応じてくれたアダム・カヘン氏は、アパルトヘイト問題に揺れる南アフリカ共和国やパレスチナ紛争、コロンビア内戦など、世界中の紛争地域に出向き、対立する関係者たちを集め、対話によって起きていることを変容させる「紛争解決ファシリテーター(紛争解決人)」だ。日本企業のリーダーたちに向けて、どのように問題解決に取り組むべきかを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)
紛争解決の仕事は難しい
失敗の中から学んだこと
――カヘンさんの本を読むと、失敗事例もたくさん書いてあり、紛争解決という仕事がいかに大変かが、よく分かります。日本企業にも、組織の問題を解決できずに、意気消沈しているリーダーたちがたくさんいます。
私の最初の本(『手ごわい問題は、対話で解決する』ヒューマンバリュー刊)が出版されたとき、オランダで企業や組織のマネジメントのプロたちに向けた講演をしたことがあります。私はこれまで、世界の紛争地域での民族和解やコミュニティ再生、さらには発展途上国での経済開発などのプロジェクトに関わってきましたが、オランダの講演会に集まったマネージャーたちによれば、「企業のマネージャーも、あなたとまったく同じことをしている」とのことでした。
つまり、組織を活性化するためには、個々の社員たちのニーズや潜在力、強みを引き出し、チームを作って一緒に物事を進めて行く必要がある。しかし、これがなかなか難しい。
実は、最初の本のタイトルは「私の人生は失敗である」としたかったのですが、編集者から止められました(笑)。世界中に出向いて紛争解決にチャレンジしてきましたが、本当に失敗も多かった。何日も、時には何ヵ月もの時間をかけて、失敗の痛みを癒したものです。しかし、私は幸いなことに仕事が好きです。だから、ここまで続けて来ることができました。
――失敗の原因を、どう分析していますか?
ケースによって様々ではありますが、大きなものの1つが「力か愛か」という問題です。心を開き、自分を理解し、人に共感する。そうしたスタンスでの対話こそが紛争を解決すると信じていたし、だから最初の本を書きました。しかし、経験を重ねるにつれ、単に共感だけでは不十分なのだということが分かってきました。