「日本版コーポレートガバナンス・コード」は、2015年6月の適用開始を予定し、準備が進んでいる。これは、昨年6月に閣議決定された改訂版「日本再興戦略」において、企業経営者のマインドを変革し、グローバル競争に打ち勝つ経営判断を後押しする取り組みとして提唱され、その後金融庁・東京証券取引所が事務局となる有識者検討会を通じで基本方針が提案された。昨年2月に機関投資家向けの行動規範として制定された「日本版スチュワードシップ・コード」と共に、日本企業の持続的な収益力の向上のための「車の両輪」になると期待されている。

こうした動向を受け、去る2月5日、「コーポレートガバナンス・コードが拓くこれからの経営」と題したセミナーが、世界的なプロフェッショナルファーム・KPMGジャパンの主催で開催された。同セミナーで講演を行ったジョン・ウィルコックス氏は、欧州のボードアドバイザリー会社・Sodaliの会長で、米国におけるガバナンスのオピニオンリーダーの1人だ。日本版コーポレートガバナンス・コードの意義について、ウィルコックス氏に詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

コーポレートガバナンス・コードは
「日本再興」につながるか?

――今後「日本版コーポレートガバナンス・コード」が適用されると、上場企業は当該コードにある原則を実施するか、実施しない場合はその理由の説明を求められることになります。これは日本企業の経営にとって、大きなインパクトになりそうです。このコードの特徴は何でしょうか。

John C.Wilcox
Sodali Ltd.(ガバナンス・議決権行使関連コンサルテイング会社)会長。1942年生まれ。米国(ニューヨーク州)出身。ハーバード大学ロースクール卒業(法学博士)。プロクシー関連サービスを提供するGeorgeson & Companyの会長を経て、2005~08年、世界最大級の米公的年金TIAA-CREFで、シニア・バイス・プレジデント兼ヘッド・オブ・コーポレート・ガバナンス(議決権行使の最高責任者)を務める

 もともと海外でコーポレートガバナンス・コードがスタートした背景には、企業が株主の権利を保証し、投資された資金をより効率的に運用することを目指すという目的がありました。エンロン事件などの企業不祥事をきっかけに米国で成立したSOX法(上場企業会計改革および投資家保護法)では、企業の襟を正し、不正や粉飾決算を防止するという観点を重視しています。これは言わば「守り」の姿勢です。

 一方、今回日本政府が提唱しているコーポレートガバナンス・コードは、少し意味合いが違います。コーポレートガバナンス・コードを国家的な戦略と位置付け、「日本再興ガバナンス」を謳い、経済成長を目的としてスタートしているのが、大きな特徴です。これは「攻め」の姿勢と言えますね。

――現在有識者会議では、中長期の企業価値向上を図るために、株主が適切に中長期的な企業価値を判断できるための仕組みを強化した上で取締役会と株主総会の機能などを整理し、株主との対話を促進させるコミュニケーションの在り方を明確化することなどに加え、企業の社会的存在としての側面や、財務情報だけでなく、非財務情報の開示なども議論されています。これらをどう評価していますか。