世界中の卓越したアイデアが集合
プロデューサーが明かす「TED」の魅力

2009年からは東京でも派生イベント「TEDxTokyo(テデックストウキョウ)カンファレンス」が開催されている ©Michael Holmes

 世界中の英知が一堂に会し、卓越したプレゼンテーションが披露される場、「TED」(テッド)。「Technology」「Entertainment」「Design」という名が示す通り、最新のテクノロジーや驚きのパフォーマンス、政治、経済、教育からアートまで、あらゆるジャンルの「idea worth spreading(世界に広める価値のあるアイデア)」が集められ、厳選され、発信されている。

 1980年代米国で“ごく内輪のサロン的講演会”としてスタートしたこのカンファレンスは、SNSによる口コミとインターネットの無料配信により、今やその認知度はグローバルレベル。日本では、NHK Eテレ『スーパープレゼンテーション』で放映されていることで、ご存じの読者も多いだろう。

 これまでに、ビル・クリントン(元アメリカ合衆国大統領)、リチャード・ブランソン(ヴァージン・グループ創業者)、ボノ(US)など、まさに超一流のスピーカーたちがノーギャラで登壇しているという点も驚きだ。それもこのカンファレンスの“アイデア”を最重要視する姿勢と、それを広め、共有することで世界を変革しようとするイノベーティブな精神が求心力となっている。

 世界中の注目を集めながらも、TEDの開催は年に一度。さらに参加者は完全招待制によって、ごく少数に限定されるというエクスクルーシブなものとなっている。その結果、世界各国から「自分の国でもTEDを開催してほしい」「どうしたらTEDのようなイベントが開催できるか」といった問い合わせが、TED本部に殺到した。

 そこで各国のコミュニティが主体的にTEDを開催できるよう、「TEDのやり方」を習得した人々がファウンダー(設立者)になって、TEDから独立した存在という意味のTEDx(テデックス)を発足するという仕組みが生まれたのである。TEDxイベントは同時多発的に世界に拡大し、日本でも2009年、米国以外の国では初めてとなるTEDxTokyoが開催されている。

 その熱狂から7年。日本では会議にTED方式を用いる企業も出現し“TEDかぶれ病”が社内で流行するなど、良くも悪くもムーブメントは定着した。有名になったが故の苦悩、日本におけるTEDxのかじ取りについて、TEDxTokyoのプロデューサーであり日本のTEDブーム仕掛け人の1人、パトリック・ニューウェル氏に話を聞いた。


――TEDは日本でもすっかり定着したイメージがありますね。TEDxTokyoも今年で7年目を迎えました。これまでの活動を振り返りながら、日本におけるこれからのTEDxはどうなっていくのか、お話を聞かせていただけますか。

パトリック・ニューウェル氏(以下、パトリック) 2009年に僕たちがTEDxTokyoを立ち上げたとき、日本では誰もTEDのことなんて知らないし、予算もなかった。場所を借りるのもひと苦労で、舞台は家から持ち出した家具で作ったんだ。本当に大変だったけど、会場は体験したことのない興奮に包まれて、イベントは大成功だったよ。米国から視察に訪れた当時のTEDディレクターは「オー・マイ・ゴッド! これが100%ボランティアで運営されているの? TEDxTokyoの未来は明るいわね」と言ってくれた。以来、たくさんの協力者や、スポンサードを申し出てくれる企業が現れて、TEDxTokyoはどんどん大きくなった。