なお、「投資」という言葉を最も広い意味で捉えると、20歳の人にとっては、「自分の人材価値」を増すための投資、つまり、自分の稼ぐ力を増すために使う、「時間」「努力」「お金」の投資が、向こう数年くらいの間は最も収益性が高く有効である可能性が大きいことを付け加えておく。自分への投資と、お金の投資の研究は、両立するものだが、前者の重要性の方がより普遍的だ。

【借金】 借金には「いい借金」と「悪い借金」がある

 例えば、低利で借りられる奨学金によって、アルバイトに時間と労力を費やさなくても勉強に集中できて自分の価値が向上するなら、この奨学金は、「いい借金」に分類できる。

 一方、計画性の欠如から生活費が足りなくなって、年利15%にもなるような金利で借りるカードローンや消費者金融からのローンのようなものは、状況も条件も好ましくない「悪い借金」だ。何歳であっても、利用せずに済むようにするべきだ。

 「良い借金」となり得る借金の条件は、(1)返済が十分可能と見込める、(2)資金による便益が借り入れ金利よりも十分に大きい、(3)金利が高くないの概ね3点だ。

 学資、ビジネスを行う場合の資金、住宅ローンなどで自分にとって「いい借金」が存在する場合があり得る。また、理屈上は、株式などの投資に借金を利用しても構わないケースがあり得るが、リスクとリターンの見積もりは正確かつ慎重であるべきだと申し上げておく。

 なお、住宅の購入は原則として投資として判断すべきだが、その際に、人生の状況と適切な住宅が変わる可能性、不動産市況の状況(今は、あまり購入をお勧めしたくない)などについてよく考えるべきだ。

【金融ビジネス】 金融マンは決して相談相手ではない

 世間には、銀行、証券会社、保険会社などの金融機関があり、ビジネスを営んでいる。これらの組織で働く金融マンは、第一義的には自分の勤務先の利益のため、ひいては自分個人の利益のために働いているのであって、顧客を儲けさせるために存在しているのではないことをよくよく知っておくべきだ。

「成人」には、最低限その程度の世間常識を持っていてほしい。

 必要な常識を、実感を伴って理解するためには、銀行、証券会社、保険会社のそれぞれのビジネスモデルと商品・サービスについて具体的に理解して、彼らがどのようにして、誰からいくら儲けているのかを理解するのが一番だが、「お金のことは、金融機関のお金の専門家に相談するのが一番だ」などと考えてはいけないことをご注意申し上げておく。「無料相談」のような場所に、のこのこ出掛けて行ってはいけない。

 大原則は、「あなたに金融商品を売る可能性がある人に、お金の相談をしてはいけない」ということだ。

 20歳の人の全てが、現実のお金には「ビジネス」が絡んでいることを理解した上で「成人」と呼ばれる人になることを希望したい。そうなると、金融ビジネスの側では、短期的には儲けにくくなるだろうが、長期的には商品やサービスを大幅に改善することができて(競争による淘汰が進むだろうが残った会社については)お互いにとって状況の改善につながるだろう。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)