動揺しながら電話を切ると、すぐに男性から連絡が入った。

「ああ、俺だけど。昨日あなたが紹介してくれた人ね、あれはダメだわ。ぜんぜん色気がない。やらせてくれないなら、男と一緒。うん、男だ。俺たち先が短い人間は、まず体の相性だからね。彼女、怒って帰っちゃったけど、あんな人はこちらもお断りだから」

 悪びれた様子もなく言い放つ相手に、梓さんはキレた。

「そうですか。でも、そんな言い分に共感する女性はいませんよ。あなたがそんな常識のない方だとは知りませんでした。彼女に申し訳ない。本当に真面目で優しくて、気立てのいい方なんですよ。あなたなんかにはもったいない。っていうか、あなたにはもう二度と、誰も紹介しません」

 ガチャンと音を立てて電話を切ると、怒りで手がワナワナと震えた。

人を傷つけても平気になるのは
認知症の一種かもしれない

「ちょっと聞いてよ。とんでもないエロじいがいたのよ」

 居ても立ってもいられず電話をかけたのは、セールスレディ仲間の友人だった。梓さんの話を、時折「えっ」とか「まあ」とか相づちを打ちながら聞き終わると、「ホント、すごいのがいたもんだわね。まさかそんなのがいるとは、普通想像しないよね。その女性もかわいそう」と同情しながら続けた。

「でもね、男の人って、結構そういうの、多いのかもしれない。だって、週刊Pとか週刊Gって、『死ぬまでセックス』とか、そんな記事ばっかじゃない。あれって、買うのは70代男性が一番多いらしいわよ」

「ええっ、そうなの。もっと50代ぐらいの、若い人が中心なのかと思っていたわ」

「違うんですって、70代なんだって。なんかさ、世間一般だと、人間って高齢になると性欲は枯れていくイメージだけど、それは思い込み。特に男性は、死ぬまでセックスできることが自分の価値みたいに思っている人もいるみたい。年の差婚で、60歳とか離れた若い奥さんと再婚して、すぐに死んじゃう金持ちもいるじゃない」