英ブックメーカーのウィルアム・ヒルPhoto:iStock/gettyimages

 英国の欧州連合(EU)離脱期限が近づいているが、金融市場はテリーザ・メイ首相が議会で歴史的大敗を喫しても安穏と構えているようだ。一方、ブックメーカー(賭け屋)の市場は、EU離脱(ブレグジット)を巡る光景が大きく変化したことをより鮮明に反映しているかもしれない。

 英議会は15日、メイ首相が提出した離脱協定案を大差で否決。現職政権がこれほど圧倒的多数の反対票を突きつけられたのは、少なくとも20世紀初頭以来だ。野党の労働党は間髪おかずに内閣不信任決議案を提出した。

 政局が大揺れするのをよそに、投資家の間にはむしろ、否決を受けてブレグジットが経済秩序を乱す確率が低下したとの安心感が広がった。ポンドは採決後に対ドルで約1%急伸したが、採決の数時間前には同程度下落していた。翌16日は対ドルで0.14%高と、ほぼ横ばいで推移。FTSE100種総合株価指数は0.5%安で引けた。

 為替や国債利回り、株式相場がほとんど変動しない一方で、ブックメーカー市場は動いている。ブックメーカーの英ウィリアム・ヒルによると、離脱期限の翌日にあたる3月30日に英国がEUにとどまっている確率は15日に69%だったが、一夜明けて77%に上昇した。

 こうした予想は、金融市場が安定している理由となるかもしれない。無秩序なブレグジットや政権交代の可能性が低いとの見方を示しているからだ。もう一つ、市場に安心感をもたらしている予想がある。年内に2度目の国民投票が実施される確率は、1カ月前には5%を切っていたが、ここへ来て42%に大幅上昇しているのだ。

 もちろん、ブックメーカー市場の予想が絶対というわけではない。2016年の国民投票では結果を読み誤り、開票の数時間前までEU残留派の勝利が予想されていた。

 衝撃の投票結果は世界の市場を乱高下させた。だが投資家はもはや、ブレグジットの紆余(うよ)曲折が市場の急激な変動をもたらすとは信じていないようだ。

 3月29日の期限が近づく中、さまざまな展開が考えられる。離脱日の延期や、16年の投票結果を覆し得る2度目の国民投票の実施も予想されている。

 スポーツ賭博を手掛ける英国のブックメーカーは政局予想も数多く提供しているが、賭けは盛況だ。

 オンラインブックメーカーのベットフェアの広報担当者ケイティー・ベイリス氏によると、「人々はブレグジットには飽きているが、賭け市場は過熱している」という。同社には16日の内閣不信任案の採決を巡り、10万ポンド(約1400万円)の賭け金が集まった。もっとも、金融市場で取引される規模に比べれば少ない額だ。

 ブックメーカーのスマーケッツで政局市場部門を率いるサルビート・バクシ氏は、ブレグジットの行方を巡る不透明感は賭け市場に追い風だと語る。小さな賭け金で大きなもうけを手にできる可能性があるからだ。「確実なときには、賭けをする価値はない」と言う。

(The Wall Street Journal/Avantika Chilkoti)