年齢を重ねれば、視力や足腰…体のあちこちで衰えを感じるのは仕方がないことだ。しかし、多種多様な老化のサインのなかで“喉の老化”について考えたことのある人はあまりいないかもしれない。しかし喉の衰えを放置すると、後に生命を脅かす病「誤嚥性肺炎」を引き起こす可能性があるという。(清談社 真島加代)

せき込む、声がかすれる…
原因は喉の老化だった!

飲み込む力を鍛えることは、健康寿命を伸ばすことに直結します。視力や足腰の老化を気にかける人は多いが、見過ごされがちながら、健康に大きく影響を及ぼすのは「喉の老化」。適切なトレーニングをすることで、喉の健康を保つことは健康寿命を伸ばすことにつながる  Photo:PIXTA

「最近、風邪でもないのによくせき込む」「以前に比べて声がかすれる」など、ちょっとした違和感を覚えつつも、普段どおり生活している…そんな中高年は少なくないのではないか。実は、その症状は“喉の老化”につながるサインなのだとか。

「皮膚年齢や血管年齢、認知症を気にして対策をしている中高年は多くいますが、喉年齢にまで気を配っている人は、ほとんどいないかもしれません。しかし、喉の衰えを放っておくと、命に関わる呼吸器疾患『誤嚥性肺炎』を引き起こす可能性があるのです」

 そう話すのは、池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師だ。誤嚥性肺炎とは、唾液や飲み物と一緒に細菌が気道に落ちて肺に到達し、炎症を起こす疾患だ。「眠っている間の唾液の誤嚥が引き金となり、発症する例が多い」と大谷医師は話す。

「唾液や細菌が気道に入ってしまうのは、喉が物を飲み込む力『嚥下機能』が低下している証拠。つまり、喉の衰えが誤嚥性肺炎の原因のひとつです。60代後半~70代で誤嚥性肺炎を発症すると、一般的な肺炎の症状である発熱やせきなどの症状が出ないこともあります。それでも、病状が悪化し、次第に息苦しさを感じて歩くことができなくなります。最悪の場合、寝たきりの状態になったり、亡くなってしまうこともあるのです」

 また、高齢者が正月の餅を喉に詰まらせての窒息してしまうのも、嚥下機能の低下によるもの。呼吸器と直結している“喉の老化”は、死につながっているといっても過言ではないのだ。