一等地へ出店し、店舗数を拡大中
なぜドイツではなく日本を選んだのか

アックス氏「ベンチャーキャピタルからの投資は考えていなかった」と語るアックス氏

 カイザーキッチンは現在、赤坂アークヒルズや日本橋高島屋新館を含む都内の一等地へ出店を加速させている。2019年2月8日の時点で計12店舗。これらはすべて直営だが、今後はフランチャイズも募りながら、2019年末までにはその数を30店舗まで拡大する計画だ。従業員はすでに300人近くに上っている。

 資本金は7億7000万円を集めた。これだけ急ピッチで出店できるのは、長期的な事業の成長に理解のある2人のスイス人実業家から出資を受けたからだという。「レストランビジネスは何十年もかけて築き上げるもの。短期の資金回収を目的とするベンチャーキャピタルから投資を受けることは最初から考えていなかった」とアックス氏。

 それにしても、なぜ起業する場所として故郷のドイツや米国ではなく、あえて日本を選んだのだろうか。アックス氏によれば、これにはいくつかの理由がある。第1に、2人とも短期間だが日本に住んだ経験があり、日本にはいい印象を持っていた。リュッテン氏は名古屋大学で学んでいたこともあり、日本語もできる。日本滞在中はドイツ料理の店に連れて行かれることも多かったが、若い2人にとって、日本にあるドイツ料理の店はやや古めかしい感じがした。

 インバウンドの需要が伸びれば、日本のホスピタリティ産業はこれからもっと成長するだろう。日本での成功をバネにすれば、アジアを中心に海外展開もできる。起業するなら今だろう──。そう思い、2人は日本でビジネスを立ち上げることを決意した。

週休2日、1日8時間労働
従業員も認める「正真正銘のホワイト企業」

日本橋高島屋店の店長・柚木修一さん日本橋高島屋店の店長・柚木修一さん

 現スーパーバイザーで日本橋高島屋店の店長を務めている柚木修一氏(48歳)は2015年、2人が赤坂に1号店を出した時に雇った最初の店長だ。飲食業界で長く勤めた彼の目から見ても、カイザーキッチンは「正真正銘のホワイト企業だ」という。

「週休2日は確保でき、労働時間も1日あたり8時間と長時間労働を強いられることはありません。条件でそううたっていても実態は違ったという会社もありますが、うちはそうではありません」(柚木氏)

 ただし、柚木氏も賃金に関しては「業界水準と比較して目立って高いわけではない」と言う。

 カイザーキッチンでは本部・店舗を問わず一緒に働くメンバーを「チーム」と呼んでいる。経営陣は「チームの幸福」を第一の目標に掲げ、「マルチカルチャーだけれど家族のようなチーム」を目指している。ユニークなのは共同創業者の1人であるマーク・リュッテン氏がCHO(Chief happiness officer:チーフ・ハピネス・オフィサー)を兼務していることだろう。