予算案の閣議決定をやり直し
賃金指標など修正

 深刻なのは、勤労統計を基に経済の状況を示すさまざまな指標で修正が行われ、政府の統計自体への不信感が広がっていることだ。

 例えば、毎月勤労統計を再集計した結果、毎月の名目賃金を示す「現金給与総額」の伸び率は2012~17年が上方修正される一方で、2018年以降はすべて縮んで下方修正された。

 国内総生産(GDP)や景気判断の根拠の1つになる「雇用者報酬」も下方修正された。この結果、日本経済の立ち位置すらもあいまいになる事態なのだ。

 安倍政権が受けた衝撃も大きかった。まず迫られたのは、来年度予算案の“修正”だ。

 賃金水準を基に決まっている雇用保険や労災保険、船員保険などに、合わせて795億円もの追加給付と必要経費が発生したからだ。

「長年にわたり不適切な調査が行われ、統計の信頼が失われる事態が生じたことは誠に遺憾」(安倍晋三首相)

「とにかく、極めて遺憾なことだ」(麻生太郎財務相)

「統計法の規定に則していなかったと考えられる。甚だ遺憾」(菅義偉官房長官)

 1月18日に、昨年末にいったん行った来年度予算案の閣議決定をやり直した際には、安倍政権のトップ3が、立て続けに「遺憾」を表明せざるを得なかった。

 そもそも不正調査はなぜ行われたのか。

ルール違反の抽出調査に
04年から切り替え

「不正」を、厚労省が認めたのは昨年12月13日、統計委員会長との打ち合わせの場だった。

 出席した厚労省や総務省の担当者を前に、委員長の西村清彦氏(元日銀副総裁)が、「毎勤」の結果について詳細な分析の必要性を提起した。

 2018年に入り、現金給与総額の伸び率が目立って高くなっていたことに、一部のエコノミストらが疑問を投げかけ、「不正確性」が指摘されていたからだ。

 西村委員長が、この問題を統計委員会のテーマにする考えを示したところ、厚労省の担当者が事もなげに、こう発言した。

「従業員500人以上の事業所について東京都では、抽出調査をしている」

 本来、従業員500人以上の事業所はすべて調査することになっていたのに、勝手に抽出調査に変えていた驚愕の事実を認めた。