「あぜんとした」

「目が点になった」「あり得ないことが起きている」

 この時のことを知る関係者は、今も信じられないという驚きを隠さない。

 毎月勤労統計調査とは、国が統計法で定める56の基幹統計の1つ。会社員の給料や労働時間の実態と変動を明らかにする目的で行われている。

 調査項目の中で特に重視されるのが、名目賃金と実質賃金だ。

 毎月初旬に公表される速報値は午前9時の公表と同時にメディアがインターネット速報で流すほどだ。毎月の物価の増減と賃金の伸び具合を時系列で比べることができるため、政府の政策決定や企業の賃金決定の際の基礎データとして用いられている。

 景気の現状や先行きの判断にも欠かせず、内閣府が公表する国民経済計算(四半期GDP速報)の算出に使う「雇用者報酬」など政府内の別の指標や、雇用保険の給付額など、さまざまな公的数値の算出の基になっている。

 調査対象は、従業員5人以上の事業所で全国200万以上。このうち約3万を抽出して調査するが、従業員500人以上の事業所に限っては、全数調査するのがルールになっている。

 調査の実務は、厚労省から委託を受けた都道府県の担当者が担っている。

 ところが、厚労省は東京都の従業員500人以上の事業所について、04年から、全体の約3分の1の事業所を抽出する調査に切り替えていた。

 調査すべき約1400事業所のうちの3分の1の事業所だけを掲載した名簿を渡すようになったという。

 なぜこの時期に抽出調査に切り替えたのか、誰が判断したのか。

 23日にまとめられた特別監察委の中間報告は、「(全数調査を受ける)企業から苦情が多く、大都市圏の都道府県の担当者の負担軽減への配慮だった」と、認定。その上で、調査変更の手続きを踏まず担当課だけで判断したのは「不適切な対応」とした。

 全国に5000以上ある従業員500人以上の事業所のうち、3割近くが集まる東京都の作業の負担が重くなっていたのは確かなようだ。だが、小池百合子都知事は「都から国に(調査方法を)変えてくださいといった文書などはない」と、会見で述べていた。

 だが監察委は東京都側への調査はせずに、厚労省の担当者への聞き取りだけで、動機を判断した。

 その一方で、担当者の中には不正と気づいた職員もいて、「変えた方がよいと思ったが、統計委員会や審議会にかけると問題がある」という認識を職員が抱いていたと認定している。