しかし、「異変」は公表数値そのものに表れた。

 大手企業が集まる東京都の事業所について、約3分の1の抽出調査に切り替えたことで、全体の中で大規模事業所の調査数が減ることになり、04年から2017年までは、正しく調べた場合より低い賃金の数字が出ていたのに対し、データ補正をしたことで、18年1月からは前年度同月比で賃金が高い伸び率になったからだ。

 最初にこのことを指摘したのは、西日本新聞の2018年9月12日付1面、「統計所得、過大に上昇」の記事だった。

 記事では、名目賃金に当たる「毎勤」の「現金給与総額」が、18年1月以降、前年同月比1%~2%以上の高い伸びを記録し、同6月には前年同月比3.3%増と、1997年1月以来21年5ヵ月ぶりの高い伸びを示したことを指摘している。

 18年からは、499人以下の対象事業所を見直したことから、入れ替え前の事業所だけを集計した「参考値」も厚労省は公表していたが、その数値では、前年同月比の伸び率が1%を超えた月は3月と6月だけ。6月も参考値では伸び率は「1.3%」しかなかった。

 こうした結果に、大手証券のエコノミストが「統計の信頼性を疑わざるを得ない。報道や世論もミスリードしかねない」とコメントしている。

 この問題は、その後、他のメディアでも報じられ、金融機関などのエコノミストらから「数値の不自然」に不信の声が出たため、厚労省は昨年9月28日の統計委員会で事情を説明せざるを得なくなった。

 しかし、この時も厚労省は、東京都分を抽出調査にしていることを伏せたまま、「499人以下の対象事業所を見直した影響」と説明した。

 しかも「500人以上の事業は全事業所が対象」と、改めてウソの報告までしている。

 こうして「毎月勤労統計調査」は、昨年秋ごろからは、関係者の間では「いわくつき」の統計とみなされていたのである。

お家芸の「資料廃棄」で
統計が空白の期間が

 不正調査問題で、厚労省が対応に動いたのは、年明け後初の閣議があった1月8日だった。

 昨年12月28日、朝日新聞の「毎月勤労統計 全数調査怠る」(夕刊一面)のスクープ記事が出て、その後、主要メディアが一斉に報じたことで、逃れられないと考えたようだ。