スキルス胃がんスキルス胃がんは20代でも発症する可能性がある恐ろしいがんです Photo:PIXTA

 スキルス胃がんは、がんの中でも治癒が最も困難ながんの1つです。20代でも発症し、死に至ることがある極めて厄介ながんです。

 ピロリ菌治療薬の台頭や内視鏡検査および手術技術の発達により、胃がん全体の罹患数や死亡数は今後減少していくと予想されます。ところが、スキルス胃がんは発症原因が特定されていないばかりか、診断時には既に相当進行していることが多く、有効な治療方法が確立されていません。

 胃がん発症年齢はほとんどが60歳以降であるということから公的な胃がん検診は50歳以降で十分だという見解が主流です。 しかし、ことスキルス胃がんに関しては話が単純ではありません。若年でも発症し、しばしばその命を奪うスキルス胃がんに対して、どのように対処すればいいのでしょうか。

スキルス胃がんは働き盛りでも発症
5年生存率はなんと7%未満

 スキルス胃がんは、膵臓がんと同様に極めて治療成績が悪い難治がんです。その上、若年齢(20代)でも発症することが決して珍しくありません。

 膵臓がんは、そのような若い世代での発症はまずありません。他の胃がんも好発症年齢は60歳以降と比較的高齢です。一方、スキルス胃がんは、自分の子どもがまだ小さく、これからも元気に生き続けなければいけないような(自他ともに死を受け入れがたい)世代でも発症し、その命を奪うことがしばしばあるのです。

 スキルス胃がんの患者さんの悔やまれる死に対して、そのご家族が耐え忍ぶ姿を目にするたびに、われわれ医療従事者は自らの無力を痛感するとともにスキルス胃がんに対する有効な医療技術を一刻も早く作りだす必要があることを身に染みて感じます。

 スキルスとは、ギリシア語で「硬い腫瘍」を意味するskirrhosに由来します(英語表記ではscirrhous)。スキルス胃がんは、他の一般の胃がんと異なり、胃の壁に沿って染みこむように広がっていきます。そのため、がんが相当に広がるまで症状が出ず、がん発見のきっかけとなる胃粘膜の凹凸も不明瞭であることが多いため見つけにくいのです。

 胃が硬くなり内腔が狭くなってから発見されることがしばしばで、既に腹膜播種(腹膜の中にがんが飛び火して直腸、卵巣、尿管などに多発転移している状態)を来しているケースがほとんどです。すなわち、スキルス胃がんは根治的な手術が行える可能性が極めて低く、5年生存率は7%未満という惨憺たる結果となっています。