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ピロリ菌がいなくてもかかる胃がんピロリ菌がいなくてもかかる「胃がん」とは? Photo:PIXTA

ピロリ除菌により胃がんは減っていくはず?

 胃がんの原因として代表的なのが、ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ菌)感染です。ピロリ菌は幼少時の飲食物(飲料水)が原因で感染します。幼少時に井戸水を飲む世代では特に感染率が増え、戦前生まれの方のピロリ菌感染率は80%以上にもなります。ピロリ菌に感染した胃には慢性的な炎症が生じ、胃粘膜が萎縮していきます。胃粘膜の萎縮が進むと腸上皮化生と呼ばれる、いわば「前がん状態」に陥ります。

 ピロリ菌のほとんどは除菌薬の内服で駆除することができます。成人期に駆除すれば再感染のリスクはほとんどありません。ピロリ菌の除菌が進んで感染者数が減れば、胃がんの発生数は減っていくことが予測されます。すなわち、胃がんによる死亡者数もさらに減っていくことでしょう。

 ピロリ菌に感染しているかどうかは、血液検査や呼気検査などによって比較的簡単に知ることができます。ただし、その感染の有無だけではなく、胃粘膜の状態も同時に確認したほうが本来は望ましいので、ピロリ菌感染について気になる方は、まずは胃内視鏡検査を受けることをおすすめします。

 さて、胃がんの主たる原因はピロリ菌感染だとお話ししてきましたが、昨今、ピロリ菌感染がなくても発生する胃がんが注目され始めています。

ピロリ菌に無関係の胃がんが増加中
ストレスや肥満による胃酸の逆流が要因に

 ピロリ菌感染がないのに発生する胃がんに「胃食道接合部がん」があります(食道胃接合部がんと表現されることもしばしばあります)。これは字の通り、胃と食道の接合部(つなぎ目)を中心に発生するがんで、ピロリ菌感染がない方がむしろ発症しやすい傾向にあります。

 ピロリ菌感染がないと胃粘膜は萎縮しないので胃酸の分泌が保たれています。胃酸はストレスによってもその分泌が促され、過度に分泌された胃酸が胃から食道のほうに逆流すると、逆流性食道炎を誘発します。これにより、食道の粘膜に傷がつき、バレット上皮と呼ばれる変化を来すことがあります。バレット上皮が広がるとそれを背景にがんが発生しやすくなります。このようにピロリ菌感染がない方にも、胃食道接合部がんというタイプのがんが発生することがあるのです。