嵐が活動休止を発表した。記者会見では「無責任じゃないか」という質問も飛び出し、その質問自体が袋だだきにあっている。これは、組織に果たす責任と自分の裁量の両立の問題だ。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

長期休暇や転職も無責任と断じる
日本社会が抱える問題点が露呈

嵐の活動休止のニュースは日本中を駆け巡りました。嵐の活動休止に対する「無責任ではないか」との指摘は、転職や長期休暇取得を申し出た際に、周囲から受ける「責任を果たせ」というリアクションによく似ている

 国民的アイドルグループ、嵐が2021年以降の活動休止を発表した。そこまでに2年を残しての発表だ。2017年6月にリーダーの大野智が「自分の嵐としての活動をいったん終えたい」という相談を他メンバーにしてから、1年半にわたって相談してきたという。

 相談してきた期間の長さは、それだけ、メンバー同士の合意を大切にしてきたということだろう。また、発表から活動休止までの期間の長さは、それだけ、関係者のビジネスやファンの人たちの気持ちを大事にしているということだろう。わが国を代表するアイドルグループとして、責任ある対応だったと思えてならない。

 しかし、記者会見では、活動休止することに対して「多大な功績を残されてきた、お疲れさまでしたという声も多々あると思う一方で、やっぱり無責任じゃないかという指摘もあると思うんです」という質問が出た。それに対して櫻井翔が「2年近くかけて思いを伝えていく期間を設定したのがわれわれの誠意。たくさんのパフォーマンスを見てもらい、姿勢と行動をもって無責任か判断してほしい」と答えている。

 メディアでは、活動休止を無責任だとする質問に対して、非難が殺到している。ニュースやワイドショー番組のコメンテーターが「どこが無責任だというのかわからない」「誰が無責任だというのか」「みんなイラッとした」などという意味の発言を繰り返している。

 記者会見の一問一答からも、メンバーの表情からも、そして、相談してきた期間、活動休止までの期間を考えても、今回の活動休止に関して、責任ある言動をしているように、筆者も感じる。

 しかし、この「無責任じゃないかという指摘」は、ビジネスの世界で長い休暇取得や転職を申し出た時に、必ずといっていいほど出るものだ。その意味で、「無責任じゃないかという指摘もあると思うんです」という質問をした記者は、質問すべきことを質問したといえる。