だが、大都会に出た若者にとっては、もはやそんな考えは時代錯誤。親から縁談話を持ち出されたり、プライベートや仕事について、あれこれ質問攻めにあったりするので「面倒だから帰りたくない」「帰るのが怖い」という春節恐怖症になるが、それでも「1年に1度のことだから、やっぱり……」と自分に言い聞かせて重い腰を上げる。

 仕事上の特別な事情でもない限り、「這ってでも帰らなければならない」と思うのだ。都会での気楽なシングルライフを送っている若者ならばなおさら、田舎でのウエットな人間関係を煩わしく思ってしまう。そうした傾向はもう10年以上も前から始まっているが、ここ数年はさらに「都会」と「田舎」の考え方の落差が強まっているように感じる。

“家族の義務”を果たさなくてもよい
海外在住の中国人たち

 ところが、そんな思いが交錯する中国国内に住む中国人と違い、春節の“家族の義務”を果たさなくてもよい立場の中国人がいる。それは海外在住の中国人たちだ。

 現在、日本に住んでいる中国人は約70万人に上る。アメリカに住んでいる中国人は300万人以上。ほかにも東南アジアやカナダ、オーストラリア、イギリスなど、中国人は世界各国に散らばっている。

 むろん、彼らの中にも春節シーズンには母国に帰省するという人もいる。たとえ航空券がどんなに高騰しても、この時期の帰省はお約束、という人も多い。

 だが、「海外ではこの時期も仕事があって、仕事を休めないから」という理由で、春節の帰省から“解放”されることに、内心ほっと胸をなでおろしている人も少なくない。

 距離的に中国に近く、むしろ「中国国内の南から北に帰省するよりもずっと近いし楽なんじゃないの?」と思われる在日中国人もそうだ。東京都内で飲食店を経営する王英潔さん(42歳)もその1人。王さんはこう語る。