「日本では春節は普通の日なので、この時期にお店を休めないので帰省できないよ。お母さんごめんね、と先日中国に住む親にメッセージを送りました。もう春節には何年も帰っていません。親も日本に住んでいる私のことは特別だと思って、あきらめているみたい。国内の別の都市に住んでいる弟のほうが、しつこく『帰ってこい』と親から言われてかわいそう」

「自分はいつも航空券が安い6月くらいに定期的に帰るのですが、その時期であれば、大勢の親戚に会わなくてもいいので、かなり気が楽。遠い日本にいても、今はウィーチャットでお年玉をあげなければならないので大変だし、日本の情報も筒抜けだけど、民族大移動の大混雑している時に移動するよりはまし。だって、空港のタクシー乗り場で3時間待ちとか、地下鉄に乗るまでに2時間待ちとか、体力的にとても耐えられないので……」

後ろめたさはあるものの
気楽さもある

 同じように、「春節の時期は中国に帰らない」という在日中国人が私の周囲にはけっこう多い。春節を両親と過ごせないことに一抹の寂しさや申し訳なさ、後ろめたさはあるものの、気楽さもある。

『日本の「中国人」社会』(日本経済新聞出版社)、著者:中島恵、新書:232ページ『日本の「中国人」社会』(日本経済新聞出版社)、著者:中島恵、新書:232ページ

 別の友人は「もしこの時期に帰省すれば、お土産代だけで50万円くらいは使うことになるでしょう。私が帰るとわかったら、化粧品や家電製品の購入もたくさん頼まれてしまうし。それに頼まれたからといって、その商品のお代を受け取っていいものかどうかも微妙……。そんな悩ましいことも避けられるので、私は日本に住んでいて本当によかった(笑)」と胸をなでおろしていた。

 個人差や地域差もあるので、もちろん一概にはいえない。だが、春節シーズンの帰省には、もともと家族とのつながりを大事にする中国人でさえため息が出るほどの物理的、心理的なしんどさを伴う。かつて、日本人も「お正月は田舎で過ごす」ことが当たり前だったが、今は必ずしもそうではなくなってきた。

 中国人も同様に価値観は日々変化しているのだが、いい意味でも悪い意味でも、「家族」という呪縛から逃れられないのが、やはり中国人なのかもしれない。